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カウンセリング現場での「傾聴」が理解できる古宮昇著『共感的傾聴術~精神分析的に“聴く”力を高める』(誠信書房)

Kyokanteki_keityojutsu

共感的傾聴術

 CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格試験の1次試験(学科)に合格。2次試験(実技)の準備のため、古宮昇著『共感的傾聴術~精神分析的に“聴く”力を高める』(誠信書房、2014年8月20日発行)を読んだ。著者は精神分析的心理療法と来談者中心療法による開業カウンセリングを15年行っているプロフェッショナル。本書では、「転移」や「逆転移」、「抵抗」といった精神分析の用語も解説しながらが、奥深いカウンセリングの世界を紹介している。CDA、キャリアカウンセラーがここまで精神分析的なカウンセリングを行うことはあまりないと思うが、CDA養成講座で学んだ「無条件の肯定的配慮(受容)」=本書では「無条件の受容(尊重)」=、「共感的理解(共感)」の具体的イメージを学ぶことができた。

 まず「無条件の受容(尊重)」について。「来談者のあり方に共感するとき、カウンセラーのこころには、彼・彼女を変えようという思いは出てきません。来談者はしばしば、他人から見るとヘンな、おかしい、ダメな、良くないことを、考えたり感じたり行ったりします。しかし、彼らのこころや行動を『ヘンだ』とか『良くない』と見なすとき、わたしたちは彼らのことを、その人の身になって理解しているのではなく、外側から見ているのです」。

 そして、ロジャース(養成講座ではロジャーズ)による共感の定義も紹介されていた。「共感という状態、すなわち共感的であるということは、他者の内的準拠枠を、自分があたかもその他者であるかのように、しかも『あたかも』という性質を失うことなく、正確にかつ感情的な要素と意味とともに認識することである。それゆえ、他者の傷つきや喜びを感じ取るように感じ、それらの感情の原因をその人が認識するように認識するが、そのとき、『あたかも』自分自身が傷つきや喜びを感じているかのように、という認識を失うことがない」「セラピストが、来談者の内的世界に起きる瞬間・瞬間の経験を、来談者が見るように見て、来談者が感じるように感じ、しかもセラピスト自身の自己という分離性を失うことなく、つかむこと」。

 本書でのカウセリングの事例、フロイトが取り上げるようなケースばかりだった。しかし、その場で必要となる精神分析の理論は、知らないと、カウンセリングが難しくなるケースも出てくるのではないかと思った。

 まず、転移。「かつて親など重要な他者に対して感じた感情、欲求、考え、態度、行動、想像などを今の誰かに置き換える現象を、『転移』と呼びます」「恋愛・結婚関係や親友との関係は、特に転移反応を引き出しやすい人間関係です。これらの関係は親密なので、幼かったころの親子関係の親密さが無意識のうちによみがえってくるからです」「また、教師、上司、警察など権威者との関係も、転移反応を引き出しやすいものの一つです。これらの人間関係では、権威者が自分より権力を持ち、自分に対して大きな影響力を持っているという特徴が、やはり幼少期の親子関係と共通しているからです」。

 逆転移。「カウンセラーが『来談者から優秀なカウンセラーだと思われたい』『来談者から好かれたい』と感じるのは、カウンセラーの(来談者に向けられた)転移反応です。このように、カウンセラーが来談者に対して抱く転移を『逆転移』と呼びます」「カウンセラーが来談者に対して、あたかも子どもが親に対するかのように反応している、ということです」。

 「私たちが苦しむ人の助けになろうとするときに陥りやすい落とし穴ですが、来談者が良くなることをカンセラーが必要とすると、来談者には重荷になります。『お願いだからわたしのために良くなってください』というカウンセラーの思いが、来談者に伝わるからです」。

 「そのように、良くなってくれることを必要とする気持ちが起きるのは、私たち自身のこころの痛みにその源があります。来談者が良くなってくれない限り、自分の存在価値がない(小さい)と感じているのです。ですから、カウンセラーとしての能力を高めるには、わたしたち自身がカウンセリングを受けることを通して、自己無価値感の源である深い痛みを高い程度に癒すことが必要です。

 来談者(養成講座ではクライエント)が、もしも、カウンセラーに対し、不信感や不満を表現したりしたら、動揺しそうだが、そんなときも、著者であれば、このように考える。

 「この方は不信感(または不満)を感じておられるんだな。それはどんな感じだろう。わたしの何に対して、どんな不信感(不満)を感じられているのだろう」

 具体的事例。

 「来談者 先生は結婚されていますか?」

 「わたし もしもわたしが独身だったらあなたの夫婦関係の苦しみが理解できないんじゃないか、と感じられるのでしょうか」

 「来談者 守秘義務は守ってくれますか」

 「わたしがひょっとすると他の人に言うんじゃないか、という不安が湧いておられるんでしょうか(または)今日お話しされたことはすごく傷つきやすいことなので、とても大切に扱ってほしい、というお気持ちでしょうか」

 来談者の言葉そのものに反応するのではなく、なぜ、来談者がそのように言ったかを共感的に理解して、答えるわけだ。

 著者は、傾聴によるカウンセリングにおいてカウンセラーは何をするのか、そしてカウンセリングを通して来談者にどのような変化が生まれるのかを以下のようにまとめている。

 「カウンセラーが行うことは、来談者が表現している重要なことをなるべく来談者の身になって共感的に理解し、その理解を言葉で返すことです。そのとき、来談者が表情、声の様子、言葉によって表現していることを、カウンセラーがあたかも自分のことのように、なるべくありありと想像して感じることが大切です」

 「カウンセラーがそれ以外の意図を持って対応すると、カウンセリング過程を妨害してしまいます。それ以外の意図としては、たとえば次のようなものがあります」「来談者の考え方や行動を『正そう』とか『直そう』とする、何かの行動をさせようとする、教えようとする、説得しようとする、何かに気づかせようとする、感情を感じさせようとする、何かについて話させようとする、掘り下げようとする、来談者の緊張、不安、不信感、落ち込み、怒りなどの感情を変えようとする、苦しみから救おうとする、カウンセラーのことを信頼させようとか、カウンセラーに好感を持たせようとする、などです」。

 「カウンセラーが行うことは、来談者が表現している重要なことをなるべく来談者の身になって、ありありと共感的に理解し、その理解を言葉で返すことです」「それによって来談者が『カウンセラーはわたしの気持ち、考えをわたしの身になって理解し、わたしを無条件に受け入れてくれている』と感じられるにつれ、彼・彼女のこころの自己治癒力が発揮され、本当の感情、考えに開かれるとともに、深い癒しの過程が徐々に始まるのです」。

 キャリアカウンセラーの場合は、どこかの局面で具体的なアドバイス、すなわちコンサルティング的なことも必要かと思うのだが、少なくとも「傾聴する」ということはこういうことなのだ、ということがよくわかった。

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