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萩原栄幸著『「デジタル遺品」が危ない』(ポプラ社)

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『「デジタル遺品」が危ない』

 萩原栄幸著『「デジタル遺品」が危ない』(ポプラ社、2015年10月1日発行)を読んだ。

 パソコンやスマートフォン、デジタルカメラなどに残された故人のデータを「デジタル遺品」という。家族が亡くなったら、どのような手順を踏んで「デジタル遺品」を処理すべきか、自分の死後、家族を困らせないために今すぐに始めるべき生前処理とは何か――の二つが大きな問題だが、だれもがパソコンやスマートフォンを使う時代にも関わらず、この問題の難しさや重要性はほとんど理解されていないのではないか。著者の萩原氏は情報セキュリティーのプロだ。こうしたプロの知識を活用しなければ、「デジタル遺品」問題のスムーズな解決は難しいだろう。

 デジタル遺品、「放置しておけばいいのでは」と思うかもしれないが、放置して問題となりそうなケースとして、まず、「故人が先物取引やFXをインターネットで行っていた場合」がある。「亡くなられた直後に手続きしておけば、『利』が乗って収益のある取引も、気が付かないまま放置することにより、ほんの数日で『損』になるケースがあります」。

 「ブログやホームページには故人の思い出がたくさんつまっていて、その方の人生の足跡といってもいいでしょう」。でも、「いつまでも放っておくとアカウントが乗っ取られて、訪れた方々がウイルスに感染したり、詐欺を行う偽サイトへの誘導路として悪用される恐れがあります」。

 「『企業内の情報は、自宅に持ち帰ってはいけない』というのは常識です。…ただ、現実には企業機密を会社の外に持ち出してしまったことで情報が漏洩した、という事件が起きています。『ひょっとするとこのパソコンの中に、勤め先の情報が入っているかもしれない』と疑いの目を持つことも必要かもしれません」。

 故人のパソコンを、「何の処理もせずにそのまま廃棄したり、中古パソコン店に売却する」ことも危険だ。「安易に手放してしまったパソコンに、もし友人知人の名前、住所、電話番号などの連絡先が入っていたとしたら、その情報をそっくり抜き取られ、名簿として闇ルートとして売買される可能性があります」「最も酷いのは、パソコンに残ったネットバンキングや有料サイトなどのIDとパスワードが盗まれ、多額の被害を被るケースです」。

 こうしたことにならないようにするために、故人が「関わっているデジタル遺品をもれなく探し出すことが何と言っても重要」と萩原氏は言う。最初にやるべきは「パソコンの起動」だが、パスワードがわからない場合は、困難を極める。「相続人全員の合意でパソコンデータの復旧会社に依頼」することも最後の手段としてはあるが、信頼できる復旧会社は少なく、必ずしもうまくいくとは限らないようだ。

 こうした苦労を家族にかけないために、「デジタル機器を起動する際のパスワードやロックナンバー」は「ぜひ遺しておいていただきたい」と萩原氏。

 このほか、遺しておくべきものとして、金銭絡みのデータ(インターネットバンキング、株や先物取引、クレジットカードの利用明細、インターネットオークションや通販サイトの利用状況など)、思い出の写真、住所録ーーなどがあるという。

 遺族がすべきことに戻ると、インターネットバンキングの預金口座の把握は急がなければならない。「故人の財産を合計するとマイナスの財産、つまり借金の方が遺産より大きくなっていた場合は、3カ月以内に相続放棄をしないと、その借金は相続人の借金になってしまう」からだ。

 「銀行預金のほか、株や証券、先物取引、FX(外国為替証拠金取引)などの金融商品の取引」をインターネットで行っていなかったかを、確認しておく必要がある。

 有料サイトについては「遺された方が、これらの自動引き落としに気がつかなければ、クレジットカードの有効期限が切れるまで支払いが続くことになります」。

 このほか、本書には、家族に見せたくない情報は「墓場まで持っていく」、フェイスブックの「追悼アカウント」ーーなどデジタル遺品に関する有用な提言、情報が書かれている。

 死はいつ訪れるかもわからない。デジタル遺品の問題はデジタル機器、コンテンツを利用する万人が関心を持つべき問題だろう。

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