映画「花束みたいな恋をした」

 大竹伸朗展の会場で見た21世紀のBUG 画家 大竹伸朗」をもう一度みたいと思い、ネットで調べたら、「動画配信サービスU-NEXT(ユーネクスト)で見られるとの情報がネットにあったので、1カ月無料体験を始めた。ところが、残念ながら見つからなかった。

 そこで、最低何か一つは見ておきたいと、面白そうな作品を探した。

 U-NEXTは、見たい作品を探すには、とてもいい沢はますあることがわかった。

 いろいろな切り口で作品を紹介しているのだ。

⚫︎「日本アカデミー賞2022」受賞作

⚫︎恋は胸キュンだけにあらず!ときとしてほろ苦し...

⚫︎キュート爆弾炸裂!有村架純にノックアウト

⚫︎大ヒット映画『はな恋』&麦と絹のウォッチリスト

⚫︎邦楽×本日の再生数ランキング

⚫︎若きカメレオン俳優・菅田将暉が大ブレイク中!

⚫︎個性派映画館テアトル新宿公開のヒット作!

 このドラマに当てはまる映画が「花束みたいな恋をした」だった。

 履いている靴も、好きな作家も、アニメやゲームも、全て一致。これ以上気が合う二人はいないのではないかと思える二人のラブストーリー。これは、現代の癒しの映画かと最初は思った。

 ところが、「生活」が、男を変え、ピッタリ重なっていた二人がずれてくる。

 就職した麦くんの関心は、自己啓発やビジネス分野に向かい、才能も感性も豊かだったはずの男が「その他大勢」の男になっていく。一山いくらという感じの…。

 これは男にとって大変辛い映画だった。

 しかし、会社を退職した今の私の視点で見ると、だからこそ自分らしく生きなければと強く思わせてくれる映画だった。もちろん65歳で会社を退職した後も、仕事一途の生き方は不可能ではない。そういう人も多いだろう。けれど、ビジネス書や自己啓発書につい手が伸びることはない。本を読み聞かせてくれる「audible 」は、そんなタイトルばかりで、「花束みたいな恋をした」の人が変わった麦くんのような男がきっと多いのだろう。

 そんな二人の出会いの頃の関係を取り戻すには?

 深ーい日本社会の問題をわかりやすく示してくれた作品だった。

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映画「遠吠え」

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 14日夜、吉祥寺パルコ地下2階の「アップリンク吉祥寺」で、映画「遠吠え」を観た。終映後、監督、プロデューサーらのトークショーがあった。クラウドファンディングで製作費を集めるなどの苦労話もあったが、そんな苦労も吹っ飛ぶような出来ばえに、皆、手ごたえを感じているようだった。

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 主人公は、独身で仕事もうまくいかない40歳の男、田之上隆二。マッチングアプリで出会った女子大生から、あるミッションを依頼される。同じ時期に中学の同期会があり、かつて思いを寄せていた女性に再会するが、彼女は、かつての同級生と結婚し、必ずしも幸せではないようだったーー。

 この二つの出来事で彼は「変わろう」とするのだが、そう簡単に変われるものではない。主人公の優柔不断ぶりを観ているとイライラしてくる。新興宗教の教祖まで登場するが、果たして彼女たちを「救える」のだろうか?

 ロシアのプーチン大統領が典型的な例だが、権力をふるう男にろくな奴はいない。男たちが作る世界は、男たちが過ごしやすいように作られており、時に女性たちに理不尽な苦しみをもたらす。それがわかっても、なかなか、そんな現状を改革してくれる男たちも現れない。

 こんな状況だと「もう男はいらない」と、女性が革命を起こすのではないかと、危惧する今日この頃だが、この映画は、観客を笑わせるだけでなく、そんな恐怖心も感じさせてくれた。

 ややネタバレになりそうだが、タイトルは「遠吠え」より、「勝手にしゃがれ」の方がいいのではないかと思う映画だった。

 9月22日まで、アップリンク吉祥寺で夜間上映。

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武蔵野大学で「古稀式」、70歳を祝うとともに、高齢期の人生を豊かにするための知識を学ぶ

 武蔵野大学武蔵野キャンパス(東京都西東京市新町)で、9月11日午後、70歳を祝う「古稀式」と、70歳以降の人生を豊かにする「学び」を組み合わせたユニークな試みが行われた。

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 主催は武蔵野大学しあわせ研究所。三井住友信託銀行と一般社団法人全国地域生活支援機構(JLSA)の共催。西東京市、武蔵野市、三鷹市、小金井市の4市が後援した。

 この試みを企画した樋口範雄法学部特任教授によると、「高齢者が学ぶ、高齢者が教える、高齢を祝う」という形をとったという。主に70歳以上の高齢者を対象に実施。単に長寿を祝うだけでなく、フレールや認知症の問題から資産管理、高齢者にとってのICTまで、高齢者学の主要な問題を高齢者と学生が一緒になって学び議論する機会とした。

 評論家、NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事長の樋口恵子さんが基調講演を行った。 

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 樋口恵子さんは「高齢期には、人生第二の義務教育が必要」とし、2012年3月には文科省が設置した「超高齢社会における生涯学習の在り方に関する検討会」に参加。「長寿社会における生涯学習の在り方について」というリポートをまとめたという。
 樋口さんは、人生100年時代を迎え、何よりも大切なのは平和を維持すること。そして、そのためには皆が学び続け、平和な長寿社会づくりを進めることが必要」と強調した。 

 今年90歳になった樋口さんは「90歳になってみて初めてわかることが多い」とし、「こうした経験を語り継ぎ、幸せ構築のためにどう努力すればいいかを学び合いたい」と語った。そのために最近は「ヨタへロ期の研究者として活躍している」と話す。 

 樋口さんは「日本の教育は、人生50年時代の教育」だとし、「男性が料理を学び、女性が技術やデジタルを学ぶ、といったジェンダー平等の教育が人生100年時代には行われなければいけない」とし、本日の「高齢期の学び」にも触れ、高齢になったら、まず、地域包括支援センターがどこにあるか調べてほしい」「医者を何軒か訪ねて、かかりつけ医になれそうな親切な医者を見つける」「お隣さんと仲良くする」ことも重要と語った。

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 樋口さんの講演後は教室に移り、それぞれが関心のあるテーマで40分の講義を受けた。

 各教室のテーマは以下の通り。

・老いることの意味を問い直す-フレイルに立ち向う

・上手な介護保険サービスの活用法と地域包括ケア

・資産運用-超高齢社会を生き抜くために

・シニア期における「住まい」の選択

・同世代が同世代を見守る

 このなかで、私は「資産運用」の講義を受けた。高齢になる前の準備としての資産運用の話はよく聞くが、高齢期になってから、どんな資産運用がありうるのか興味深かった。

 講師は田邉昌徳武蔵野大学客員教授。

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 田邉氏は言う。「個人の資産運用と金融機関の資産運用は全く違う。例えば、個人で分散投資と言っても投資する金額が少ないから限度がある。個人は寿命もあるので投資期間が定まらない。そして、金融機関は認知症にならないが個人は認知症になる可能性がある。そして、個人はお金を貯めることが究極の目的ではない」。

 ちょっと講義が楽しみになった。

 田邉氏は「個人の資産運用を考えるにあたっては、不動産をどう考えるかが重要なポイント」という。所有者が歳をとるにつれ、どんどん劣化。メンテナンスをどうするかが大問題になる。直下型大地震も心配だ」。だとすれば「相続人がいないならば、リースバックという形をとるという選択肢もある」という。家を業者に売るが、その家を借りる形で住み続ける。「家を現金化する」ことも考えておかなければならない。

 高齢者世帯の収支は、支出が収入を上回るとされ、30年生きるとすると、2000万円を貯めておかないと収支の赤字が埋めきれない。高齢者の平均貯蓄額は2480万円とされるが、中央値をとるともう少し低い。お金が不足する世帯もある。

 何歳まで働くかという問題もある。日本は70歳前半の就業率が41%と欧州に比べると高い

 認知症の発症率は75歳から急増する。70歳は、自分の意思で資産管理できる最後のチャンスかもしれない。

 「高齢になったら取引関係をシンプルにすることも大切」という。具体的には取引銀行・講座の集約、保険関係の見直しなどだ。

 保険は一時払い・終身受け取りタイプの保険を活用したい。年金保険などだ。「不確実な状況をカバーするのは保険しかない」。

 「高齢者の株式運用は、例えば100万円だけ投資するなどリスクを最小限にするなら、行ったほうがいい」というのが田邉氏の考え方だ。「社会とのつながりを維持するのにも役立つからだ」。

 高齢期の資産運用のポイントは理解できた。

 

 この後、教室での講義のパート2があった。各教室のテーマは以下の通り。

 ・高齢者の居場所と出番を創る

 ・高齢者の健康と認知症

 ・ICT(情報通信技術)でつながるしあわせ/人生100年時代を生き抜くには

 ・高齢者の財産管理のヒント~民事信託と成年後見・ライフプランニング

 ・ホームロイヤーによるトータルサービス~見守り・財産管理・任意後見・遺言・死後事務委任・信託等~

 この中で、私は、若宮正子さんの講義を受けた。素晴らしかった!

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 若宮正子さんは、80歳を超え、スマホアプリ開発を始めたことで有名な方だが、デジタル技術をどう広めるか、誰にでも使えるようにするかという考え方が斬新。IT先進国の事例も挙げ、「高齢者こそITが必要」と訴えた。若宮さんがアプリを作ったきっかけは「年寄り楽しめるアプリない」ということだったという。プログラミングと聞くと、それだけで敬遠する人が多いが、「プログラミングは、設計図きっちり作れば若い人たちがつくってくれる」という。「手順を決め、大道具、小道具を揃えればいい。日本語で話せば自動的にプログラミングしてくれる時代もくる」といい、「抵抗感を持たないことが大切」と話す。

 「高齢者も学習し成長する」「社会貢献をしつつ社会に有用なる人材になることを目指す」それが若宮さんが副会長を務めるメロウ倶楽部の理念だ。

 若宮さんは前向きだ。デジタル庁ができても日本ではITが個人の生活まではなかなか普及しないが、「海外ではすでに未来がはじまっている」とし、デンマークとエストニアの事例を紹介した。

 デンマークでは、役所と国民の間の紙のやりとりをなくしたという。幸福度はフィンランドと1位、2位を争う(日本は62位)。

 デンマークでは、15歳以上の国民は、11回ネットにアクセスする義務があるという。デジタルができない人には周りが教える。まず家族に頼り、家族に頼れない人は自治体職員や高齢者施設の人が支援する。

 エストニアでは現地の高齢者にアンケートを実施したところ、「電子サービスを利用している」人は84%。「デジタル化で暮らしの幸福度は向上した」と答えた人は93%もいた。

 世界はすでに変わっている。若宮さんにデジタル庁を率いてもらいたいと思った。

 

 古稀式。受けた講義でそれぞれの印象は異なると思うが、私は古稀式と学びの組み合わせは、国の制度になればいいと思った。

 18歳成人になったら、被害にあわず、責任をもった消費ができるような教育を実施したい。ほとんどの人が会社を退職する古稀は、今回のようなさまざまな学びのコースを受講すべきだろう。

 今回の古稀式は、高齢者かのありようを変えるかもしれない面白い企画だった。

 

 

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映画「つむぐもの」

 犬童一利監督の映画「つむぐもの」を観た。

 韓国人女性のユナがワーキングホリデーで、日本の和紙職人の工房を訪れるが、職人は脳の病気で手が不自由になり、要介護状態に。結果的に彼女はヘルパーの役割をせざるを得なくなる。

 介護施設にも所属して職人の世話をするが、言葉が通じない中でも、次第にユナと職人の剛生は、心が通い合ってくる。酒を酌み交わしたり、郊外へ出かけたり…。

 ユナの介護は「安全につつがなくこなす」介護ではない。剛生の和紙への想いを理解したうえで、剛生の生きる喜びを引き出すような介護を始める。それを、家族は全く理解できないが、要介護状態になっても、人として素のままで触れてくれるユナの心遣いに、剛生も、不自由な体を使い、生きる力を振り絞って最後の和紙作りに挑む。

 介護は辛いもの。だから頑張ってと、仲間の介護福祉士が言うと、「タケオの介護は楽しいよ」と答えるユナ。目先のことにとらわれて、大切なものを見失っている可能性のある、要介護者を世話する人たちに、ぜひ見てほしい映画だった。

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やるべきことの「見える化」

やるべきことがたまってきて、収拾できなくなりつつある。

同窓会のホームページの更新。役員がかわったのに、旧役員のままだ。自分自身も副会長になったのに。先輩にインタビューした原稿も、アップしていない。

2年後の100周年記念誌の編集担当なのに、半年くらい何も準備が進んでいない。推進体制すらできていない。

農園に行っていない。きゅうりはもう枯葉状態。片付けないと。

親が大腿骨警部骨折で入院した際の保険の請求をまだしていない。そのあと、親が亡くなった後の諸手続きもほどんど何もしていない。

夜の犬の散歩、まだしていない。

茶道は7月の稽古に忙しくて出られず、8月は休み。少しは動画で復習しなければと思うのだが、何もしていない。

ポケモンGO、きょうは忙しくて、「レイドバトル」はしていないが、ラッキーがとれる「タスク」を近くのポケストップまで取りに行きたい。

個人事務所を設立したのだが、税務署に届け出ただけで、中身は何もない。活動が進んでいない。

本を書きたいと思って、狙いや構成、市場などについて書き始めたが、まだ半分もできていない。

会社の仕事だけは、ちゃんとこなしている。

結局、「会社の仕事だけ」なのだ。

どんなに給料が減っても、会社の仕事に対するこの真剣な向き合い方は何なのだろう。

他のことはどうでもいいと思っている?

書いてみるとどうでもいいことばかりだけれど(笑)。

やるべきことの「見える化」は大事だ。

それぞれに手をつけるために、少し部屋を片付けよう。

今日は片付けの「さわり」で終わりかな。

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産みの苦しみ

2016年11月末に会社を定年退職ーーしたのだが、昨今は再雇用というのがあって、同じ仕事をしているので(正社員から非正規雇用になって労働時間が減り、収入が激減したものの)、見た目はあまり変わらない毎日を送っている。

定年の翌日も仕事を続けるので、後輩たちが作ってくれたアーチの下をくぐりぬけてお別れをするような、映画で見た退職の際の儀式は経験していない。けじめなく、ぬるーい感じの時間が流れている。
仕事量が減って、1つひとつの仕事が丁寧にできるようになったし、自由時間も増え、そんなに悪くはない毎日というのが正直なところ。けれども、内館牧子著「終わった人」で言うように「成仏していない」感じを引きずる。

この気持ちも含めて、定年後について、何かを書こうと思うのだが、そう思うだけで先に進まない。会社でノルマのようなものを課せられて、やっと動いていたのかもしれない。操り人形。幼稚園に入った頃から、与えられたスケジールをこなすのを中心とする生き方に慣れてしまっていて、何をしてもいいと言われると、固まる。定年後は自立して、何かを生み出したいーーとでも言わないと格好がつかないと思っているだけかもしれない。
今回のタイトルは「産みの苦しみ」だが、少しも本気で生み出そうとはしていないのかもしれない。ブログを書くのを怠けている言い訳として、「実は水面下ではがんばっている。今は産みの苦しみ」と書こうと思ったのだが、今の自分を正直に見つめると単なるナマケモノにすぎない。

ということで、ブログは麻雀で高い手を上がったり、面白い本を読んだ時に、たま〜に書こうとは思うが、この怠惰病が治るまで、休業状態が続きそうだし、そのうち、死んでしまい自然消滅になるかもしれない。

近況として、いま、時間を割いてしていることを並べるとーー。
茶道
農業
同窓会
ポケモンGO
再雇用の仕事
読書
料理
犬の散歩

そして。最近、解放されたこと
親の介護
子育て

やりたいのにやれていないこと
麻雀
美味しいものを食べること
旅行
スポーツ

人生、残り少なくなると、やりたいことが多くなって、処理しきれず、パソコンのようにフリーズしている、という側面もあるのかもしれない。単なる怠け、ではなく。

体力も落ちてきたし。

ブログを長らく空白にしていた、その理由のようなものを書いた。
でも、ブログももっと自由に、気ままに書けばいいのかもしれない。

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リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著『ライフ・シフト〜100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)

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 リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著『ライフ・シフト〜100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社、2016年11月3日発行)は、超高齢社会での生き方を戦略的に語った、最初の本かもしれない。日本人がこうした本を書けないのはなぜだろう?と思うくらい、超高齢社会に突入した日本の現状も理解し、明確な提言をしている。



 「日本語版への序文」で著者は言う。「日本では、長寿化の負の側面が話題にされがちだ。この変化を恩恵ではなく、厄災とみなす論調が目立つ。本書では、長寿化の恩恵に目を向け、どうすれば、個人や家族、企業、社会全体の得る恩恵を最も大きくできるかを中心に論じたい」「20世紀に、日本の社会と経済は大きな変貌を遂げた。長寿化は、21世紀に同様の大きな変化を日本にもたらすだろう。この先、多くの変化が日本人を待っている」「日本は早急に変化する必要がある。時間は刻一刻減っていく。日本の政府に求められることは多く、そのかなりの部分は早い段階で実行しなくてはならない」「しかし、最も大きく変わることが求められるのは個人だ。あなたが何歳だろうと、いますぐ新しい行動に踏み出し、長寿化時代への適応を始める必要がある」「問題は、多くのことが変わりつつあるために、過去のロールモデル(生き方のお手本となる人物)があまり役に立たないことだ」



 「選択肢を狭めずに幅広い選択肢を検討する『エクスプローラー(探検者)』のステージを経験する人が出てくるだろう。自由と柔軟性を重んじて小さなビジネスを起こす『インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)』のステージを生きる人もいるだろう。さまざまな仕事や活動に同時並行で携わる『ポートフォリオ・ワーカー』のステージを実践する人もいるかもしれない」「このように選択肢が増えれば、人々はもっと自分らしい人生の道筋を描くようになる。同世代の人たちが同時に同じキャリアの選択をおこなうという常識は、過去のものになっていく」



 「長寿化を恩恵にするためには、古い働き方と生き方に疑問を投げかけ、実験することをいとわず、生涯を通じて『変身』を続ける覚悟をもたなくてはならない」「60歳以上の人は突如、長寿化の恩恵を手にすることになる。新しい機会が開ける半面、若い頃に想像していたより高齢になるまで働き、収入を得続ける必要が出てくる。若者たちのメンターやコーチ、サポーターを務めることがあなたの主たる役割になるかもしれない」



 日本語版序文を読むだけですっかり惹きつけられてしまったが、新しい行動に踏み出さなければ立ちいかなくなる理由や、人生100年時代の生き方のヒントが読み進めるにしたがって、具体的に示されていく。



 まず、どのくらいの資金を確保すべきで、それをどのように確保すべきか。「少なくとも最終所得の50%の資金は確保したい。勤労期間におこなう貯蓄も、所得の10%前後が現実的だろう。そうなると、80代まで働き続ける必要がある」。しかし、「80歳を超すまで休暇もなく、サバティカル(長期間仕事を離れて、学校に通ったり、ボランティア活動などをしたりして過ごす期間)もなく、柔軟な働き方もせずに、ノンストップで働き続けられるひとなどいるのだろうか?」



 柔軟な働き方について、本書は「多数の雇用を創出し、マネジメント職を提供できるのは今後も主として大企業だが、そのほかに、中小の新興企業で専門性の高い職や柔軟な働き方が生まれる」と予測する。「スキルを買いたい企業と働き手をつなぐテクノロジーは、ますますグローバル化し、安価になり、洗練されつつある。そうした仲介の仕組みはすでに増えはじめており、それが最近話題の『ギグ・エコノミー』や『シェアリング・エコノミー』の到来をもたらしている。テクノロジーの進化により情報のコストが下がった結果、買い手と売り手が互いを見つけやすくなり、独立した情報源から相手の信頼性と品質を判断しやすくなったのだ」「フルタイムやパートナーで雇われて働くのではなく、次々と多くの顧客の依頼を受けて働くことで生計を立てるーーそういう働き方をする人が増えるのがギグ・エコノミーだ」「大企業は小規模なグループや個人にアイデアやイノベーションを頼り、小規模なグループは互いの力を借りて事業の規模を拡大させ、広い市場に進出するようになる」



 一方で、本書は、「お金と仕事だけを見ていては、人間の本質を無視することになる。長寿化のもたらす恩恵は、基本的にはもっと目に見えないものだ」として、無形の資産の増減に注意を傾けるべきだとする。



 無形の資産とは⑴生産性資産ーー人が仕事で生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素のことだ。スキルと知識が主たる構成要素(2)活力資産ーー肉体的・精神的な健康と幸福のことだ。健康、友人関係、パートナーやその他の家族との良好な関係などが該当する(3)変身資産ーー100年ライフを生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験し、多くの変身を遂げることになる。そのために必要な資産が変身資産だ。自分についてよく知っていること、多様性に富んだ人的ネットワークをもっていること、新しい経験に対して開かれた姿勢をもっていることなどが含まれる。



 本書はこの後、いくつかのシナリオを示し、「お金の面での難題を克服でき、しかも無形の資産を支えられる」かどうかを検証する。そこで浮かんでくるのが、エクスプローラー、インディペンデント・プロデューサー、ポートフォリオ・ワーカーなどのいくつかの新しいステージだ。こうした新ステージを加えた「マルチステージの人生を生きるためには、これまで若者の特徴とされていた性質を生涯通して保ち続けなくてはならない。その要素とは、若さと柔軟性、遊びと即興、未知の活動に前向きな姿勢である」と本書は強調する。



(1)エクスプローラー(探検者):一カ所に腰を落ち着けるのではなく、身軽に、そして敏捷に動き続ける。このステージは発見の日々だ。旅をすることにより世界について新しい発見をし、あわせて自分についても新しい発見をする。多くの人にとって、このステージを生きるのにとりわけ適した時期が三つある。それは18〜30歳ぐらいの時期、40代半ばの時期、そして70〜80歳ぐらいの時期である。これらの時期は人生の転機になりやすく、エクスプローラーの日々は、見違えるほどの若さを取り戻せる機会になりうる。



(2)インディペンデント・プロデューサー(独立生産者):インディペンデント・プロデューサーは基本的に、永続的な企業をつくろうと思っていない。事業を成長させて売却することを目的にしていないのだ。このステージを生きる人たちは、成功することよりも、ビジネスの活動自体を目的にしている。こうした生き方をしたい人たちにとっては、企業体を築き、金銭的資産を蓄えることより、組織に雇われずに独立した立場で生産的な活動に携わるためにまとまった時間を費やすことが大きな意味をもつ。組織に属さずに主体的に働くことは、ライフスタイルを維持し、同時に生産性資産と活力資産を支えるための有効な方法だ。彼らは都市の集積地(クラスター)に集まって生活し、独特のライフスタイルを形づくって生活と仕事をブレンドさせている。年長世代の起業家たちは油断なく知的財産を守ろうとしてきたが、新しい世代のインディペンデント・プロデューサーたちは知的財産を公開し、ほかの人たちとシェア(共有)することを重んじる。



(3)ポートフォリオ・ワーカー:ポートフォリオ・ワーカーへの移行に成功する人は、早い段階で準備に取りかかり、フルタイムの職に就いているうちに、小規模なプロジェクトを通じて実験を始める。自分がなりたいポートフォリオ・ワーカーのロールモデルを見つけ、社内中心の人的ネットワークを社外の多様なネットワークに変えていく。



 本書は終章で、「変化の担い手になるのは、企業でもなければ政府でもない。・・・その担い手は私たちだ」と述べている。「長寿化の試練とチャンスを前にして、個人や夫婦、家族、友人グループが実験し、既存のやり方を壊し、それを再構築し、意見を交わし、議論を戦わせ、苛立ちを覚える必要がある」「多くの人が行動を起こし、議論することによって生まれるのは、生産的な人生を送るための新しい模範的なモデルではない。柔軟性と個人の自由を求める思いが人々に共有されるようになるのだ」「企業と政府が標準化されたシンプルなモデルを好むのに対し、個人は柔軟性と選択肢を拡大させようとする」。



 日本における超高齢社会の議論は、政府や企業に対応を求めるものばかりだ。これに対し、本書は、「担い手は私たちだ」と宣言する。そして、リスクは抱えながらもチャレンジする個人のみが、長寿化の恩恵に浴することができるのだ。









































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リンダ・グラットン著『ワーク・シフト』(プレジデント社)

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 リンダ・グラットン著『ワーク・シフト』(プレジデント社、2012年8月5日発行)は、ダニエル・ピンク著『フリーエージェント社会の到来』と並ぶ、働き方の未来(本書では2025〜2050年くらいを想定)を指し示してくれる良書だ。

 著者は「産業革命の前と後で世界は大きく様変わりしたが、私たちの息子たちの世代が経験する変化もそれに匹敵するくらい劇的なものになる」と言う。そして、「産業革命の原動力が石炭と蒸気機関という新しいエネルギーだったのに対し、これから起きようとしている変化を突き動かすのは、五つの要因の複雑な相乗効果だ」として、①テクノロジーの進化②グローバル化の進展③人口構成の変化と長寿化④社会の変化⑤エネルギー・環境問題の深刻化ーーを挙げる。

 もちろん、変化の要因を挙げるだけでは未来を語ることはできない。著者は「五つの要因の悲観的な側面をことさらに強調したシナリオを描くこともできる。それは、人々が孤独にさいなまれ、慌ただしく仕事に追われ、疎外感を味わい、自己中心主義に毒される未来だ。私たちの行動が後手に回り、五つの要因の負の力が猛威を振るう場合に実現するシナリオである」とし、このような未来を「漫然と迎える未来」と呼ぶ。

 「対照的に、五つの要因の好ましい側面を味方につけて、主体的に未来を切り開くこともできる。このような未来では、コラボレーションが重要な役割を担い、人々は知恵を働かせて未来を選択し、バランスの取れた働き方を実践する」として著者が提案するのが、「主体的に築く未来」だ。

 著者は言う。「まず必要なのは、あなたの頭の中にある固定観念を問い直すことだ。私たちは誰でも、未来についてなんらかのイメージをいだいている。そのイメージに従って、さまざまな決断をくだし、選択をおこなってきたはずだ。しかし、そのイメージが間違っているおそれはないのか。あなたは誤った未来イメージに引きずられて、誤った道を歩んでいないか」。

 「未来に押しつぶされない職業生活を築くために、どのような固定観念を問い直すべきなのか。私たちは三つの面で従来の常識を<シフト>させなくてはならない」として、著者は「第一に、ゼネラリスト的な技能を尊ぶ常識を問い直すべきだ」「第二に、職業生活とキャリアを成功させる土台が個人主義と競争原理であるという常識を問い直すべきだ」「第三に、どういう職業人生が幸せかという常識を問い直すべきだ」と語る。

 以上の流れで本書はまとめられている。

 さらに詳しく見てみよう。まずは五つの要因について。

 ①テクノロジーの進化:テクノロジーの進化は、いつも時間に追われて孤独を味わう「漫然と迎える未来」の暗い側面を生み出す要因である半面、コ・クリエーション(協創)と「ソーシャルな」参加が拡大する「主体的に築く未来」を招き寄せる要因にもなりうる。

 ②グローバル化の進展:優秀な人材が世界を舞台に活躍できるようになるという好ましい影響が生まれる半面、競争が激化し、人々がますます慌ただしく時間に追われるようになるという負の影響も生まれる。

 ③人口構成の変化と長寿化:この要因は、ある面では明るい材料をもたらす。人々が健康で長生きするようになり、80歳代になっても生産的な活動に携わり続ける人が増える。協力関係を重んじる環境で育ったY世代(=1980〜95年頃の生まれ)の影響力が強まれば、仕事の世界でコラボレーションが活発になる。移住が盛んになれば、特定の地域に有能な人材が続々と結集し、イノベーションが加速される。しかし、暗い側面もある。90歳代や100歳代まで生きるのが当たり前になれば、老後の蓄えが十分でなく、生活の糧を得るために働き口を探さなくてはならない人が増える。移住が盛んになれば、家族やコミュニティが引き裂かれて孤独にさいなまれる人が多くなる。

 ④社会の変化:具体的に例示されているのは次の七つ。①家族のあり方が変わる②自分を見つめ直す人が増える③女性の力が強くなる④バランス重視の生き方を選ぶ男性が増える⑤大企業や政府に対する不信感が強まる⑥幸福感が弱まる⑦余暇時間が増えるーー社会の変化の要因は、五つの要因のなかで好ましい結果をもたらす可能性が最も高い。一人ひとりの行動と選択で結果が変わる余地が最も大きいからだ。

 ⑤エネルギー・環境問題の深刻化:「持続性を重んじる文化が形成されはじめる」という側面は、私たちの働き方に大きな影響を及ぼすだろう。つまり「エネルギー効率の高いライフスタイルが広まって、贅沢な消費に歯止めがかかる」といった変化が予想される。

  三つのシフトについては詳細な記載があるが、ポイントをまとめると以下のようになる。

 第一のシフト〜ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ:ゼネラリストと会社の間には、社員がその会社でしか通用しない技能や知識に磨きをかけるのと引き換えに、会社が終身雇用を保障するという「契約」があった。・・・問題は、そうした旧来の終身雇用の「契約」が崩れはじめたことだ。ゼネラリストがキャリアの途中で労働市場に放り出されるケースが増えている。そうなると、一社限定の知識や人脈と広く浅い技能をもっていても、大した役に立たない。

 第一のシフトに関しては次の二つの資質が重要と著者は語る。(1)専門技能の連続的習得ーー未来の世界でニーズが高まりそうなジャンルと職種を選び、浅い知識や技能ではなく、高度な専門知識と技能を身につける。その後も必要に応じて、ほかの分野の専門知識と技能の習得を続ける。(2)セルフマーケティングーー自分の能力を取引相手に納得させる材料を確立する。グローバルな人材市場の一員となり、そこから脱落しないために、そういう努力が欠かせない。

 第二のシフト〜孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」:関心テーマごとに、世界規模のコミュニティが形成される。そうした巨大なオンラインコミュニティは、未来の世界で重要性を増す「ビッグアイデア・クラウド(大きなアイデアの源となる群衆)」の土台になる。ビッグアイデア・クラウドは、自分の人的ネットワークの外縁部にいる人たちで構成されなくてはならない。友達の友達がそれに該当する場合が多い。しかし、ビッグアイデア・クラウドだけでは不十分だ。・・・アドバイスと支援を与えてくれる比較的少人数のブレーン集団が不可欠だ。それが・・・「ボッセ(同じ志をもつ仲間)」である。ボッセは・・・声をかければすぐに力になってくれる面々の集まりでなくてはならない。また、メンバーの専門性や知識がある程度重なり合っている必要がある。専門分野が近ければ、お互いの能力を十分に評価できるし、仲間の能力を生かしやすい。ボッセのメンバーは以前一緒に活動したことがあり、あなたのことを信頼している人たちでなくてはならない。

 第三のシフト〜大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ:<第三のシフト>を実践すれば、仕事が大量消費のための金を稼ぐ手段ではなく、充実した経験をする機会に変容するのである。・・・古い仕事観のもとでは、仕事とは単にお金を稼ぐことを意味していたが、未来の世界では次第に、自分のニーズと願望に沿った複雑な経験をすることを意味するようになるのかもしれない。・・・<シフト>を行うことは、覚悟を決めて選択することだ。たとえば、ボランティア活動やリフレッシュをする際に長期休暇を取るのと引き換えに、高給を諦めるという選択をしたり、さまざまなリスクを承知の上でミニ起業家への道を選択したり、家族や友人と過ごす時間を確保するために柔軟な勤務形態やジョブシェアリング(一人分の仕事を複数の人間で分担する勤務形態)を選択したりする。

 自ら動かなければ、思うような未来は築けない。仕事の未来は、自ら作っていくという、強いメッセージを感じる本だった。

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里山次郎の農業生活<その141>新シーズンスタート、リポートはしばらくお休み

 すずしろ農園での4年目の講習がスタートした。

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 ふかふかの土。小松菜や大根は肥料不要という。
 耕す場所、通路などを区別するため、スケールで測り、割り箸をさす作業をまずした。

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 今シーズンも農家ならではのノウハウを教えてもらえそう。

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 まずはじゃがいも(品種は「きたあかり」)から。割り箸を結んだ線の「内側5cm」に糸を張り、その外側を掘る。深さ20cm。こうするとじゃがいもを半分に切ったものを置く位置がちょうど割り箸と割り箸を結んだ線のあたりにくる。

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 肥料をまき、その上に2cm土をかけて半分に切ったじゃがいもを置く。

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 じゃがいもは、へそのところで半分に切り、切った部分が腐らないように灰をまぶす。

 昨シーズンはじゃがいもを入れた場所が深すぎたと思われるので、深さに気をつけた。

ーーとここまでは書いたのだが、農業体験が4年目に入り、リポートはマンネリになりそう。新たなリポートはせずに過去のリポートで不正確な部分があったりしたら、それに手を入れるだけにとどめようと思う。

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里山次郎の農業生活<その140>土をさら地に

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 今シーズン最後の収穫。

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 ねぎとカリフラワー。

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 土地をきれいに。

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 沢庵も受け取った。

 楽しい11カ月だった。

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