武蔵野大学で「古稀式」、70歳を祝うとともに、高齢期の人生を豊かにするための知識を学ぶ

 武蔵野大学武蔵野キャンパス(東京都西東京市新町)で、9月11日午後、70歳を祝う「古稀式」と、70歳以降の人生を豊かにする「学び」を組み合わせたユニークな試みが行われた。

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 主催は武蔵野大学しあわせ研究所。三井住友信託銀行と一般社団法人全国地域生活支援機構(JLSA)の共催。西東京市、武蔵野市、三鷹市、小金井市の4市が後援した。

 この試みを企画した樋口範雄法学部特任教授によると、「高齢者が学ぶ、高齢者が教える、高齢を祝う」という形をとったという。主に70歳以上の高齢者を対象に実施。単に長寿を祝うだけでなく、フレールや認知症の問題から資産管理、高齢者にとってのICTまで、高齢者学の主要な問題を高齢者と学生が一緒になって学び議論する機会とした。

 評論家、NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事長の樋口恵子さんが基調講演を行った。 

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 樋口恵子さんは「高齢期には、人生第二の義務教育が必要」とし、2012年3月には文科省が設置した「超高齢社会における生涯学習の在り方に関する検討会」に参加。「長寿社会における生涯学習の在り方について」というリポートをまとめたという。
 樋口さんは、人生100年時代を迎え、何よりも大切なのは平和を維持すること。そして、そのためには皆が学び続け、平和な長寿社会づくりを進めることが必要」と強調した。 

 今年90歳になった樋口さんは「90歳になってみて初めてわかることが多い」とし、「こうした経験を語り継ぎ、幸せ構築のためにどう努力すればいいかを学び合いたい」と語った。そのために最近は「ヨタへロ期の研究者として活躍している」と話す。 

 樋口さんは「日本の教育は、人生50年時代の教育」だとし、「男性が料理を学び、女性が技術やデジタルを学ぶ、といったジェンダー平等の教育が人生100年時代には行われなければいけない」とし、本日の「高齢期の学び」にも触れ、高齢になったら、まず、地域包括支援センターがどこにあるか調べてほしい」「医者を何軒か訪ねて、かかりつけ医になれそうな親切な医者を見つける」「お隣さんと仲良くする」ことも重要と語った。

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 樋口さんの講演後は教室に移り、それぞれが関心のあるテーマで40分の講義を受けた。

 各教室のテーマは以下の通り。

・老いることの意味を問い直す-フレイルに立ち向う

・上手な介護保険サービスの活用法と地域包括ケア

・資産運用-超高齢社会を生き抜くために

・シニア期における「住まい」の選択

・同世代が同世代を見守る

 このなかで、私は「資産運用」の講義を受けた。高齢になる前の準備としての資産運用の話はよく聞くが、高齢期になってから、どんな資産運用がありうるのか興味深かった。

 講師は田邉昌徳武蔵野大学客員教授。

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 田邉氏は言う。「個人の資産運用と金融機関の資産運用は全く違う。例えば、個人で分散投資と言っても投資する金額が少ないから限度がある。個人は寿命もあるので投資期間が定まらない。そして、金融機関は認知症にならないが個人は認知症になる可能性がある。そして、個人はお金を貯めることが究極の目的ではない」。

 ちょっと講義が楽しみになった。

 田邉氏は「個人の資産運用を考えるにあたっては、不動産をどう考えるかが重要なポイント」という。所有者が歳をとるにつれ、どんどん劣化。メンテナンスをどうするかが大問題になる。直下型大地震も心配だ」。だとすれば「相続人がいないならば、リースバックという形をとるという選択肢もある」という。家を業者に売るが、その家を借りる形で住み続ける。「家を現金化する」ことも考えておかなければならない。

 高齢者世帯の収支は、支出が収入を上回るとされ、30年生きるとすると、2000万円を貯めておかないと収支の赤字が埋めきれない。高齢者の平均貯蓄額は2480万円とされるが、中央値をとるともう少し低い。お金が不足する世帯もある。

 何歳まで働くかという問題もある。日本は70歳前半の就業率が41%と欧州に比べると高い

 認知症の発症率は75歳から急増する。70歳は、自分の意思で資産管理できる最後のチャンスかもしれない。

 「高齢になったら取引関係をシンプルにすることも大切」という。具体的には取引銀行・講座の集約、保険関係の見直しなどだ。

 保険は一時払い・終身受け取りタイプの保険を活用したい。年金保険などだ。「不確実な状況をカバーするのは保険しかない」。

 「高齢者の株式運用は、例えば100万円だけ投資するなどリスクを最小限にするなら、行ったほうがいい」というのが田邉氏の考え方だ。「社会とのつながりを維持するのにも役立つからだ」。

 高齢期の資産運用のポイントは理解できた。

 

 この後、教室での講義のパート2があった。各教室のテーマは以下の通り。

 ・高齢者の居場所と出番を創る

 ・高齢者の健康と認知症

 ・ICT(情報通信技術)でつながるしあわせ/人生100年時代を生き抜くには

 ・高齢者の財産管理のヒント~民事信託と成年後見・ライフプランニング

 ・ホームロイヤーによるトータルサービス~見守り・財産管理・任意後見・遺言・死後事務委任・信託等~

 この中で、私は、若宮正子さんの講義を受けた。素晴らしかった!

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 若宮正子さんは、80歳を超え、スマホアプリ開発を始めたことで有名な方だが、デジタル技術をどう広めるか、誰にでも使えるようにするかという考え方が斬新。IT先進国の事例も挙げ、「高齢者こそITが必要」と訴えた。若宮さんがアプリを作ったきっかけは「年寄り楽しめるアプリない」ということだったという。プログラミングと聞くと、それだけで敬遠する人が多いが、「プログラミングは、設計図きっちり作れば若い人たちがつくってくれる」という。「手順を決め、大道具、小道具を揃えればいい。日本語で話せば自動的にプログラミングしてくれる時代もくる」といい、「抵抗感を持たないことが大切」と話す。

 「高齢者も学習し成長する」「社会貢献をしつつ社会に有用なる人材になることを目指す」それが若宮さんが副会長を務めるメロウ倶楽部の理念だ。

 若宮さんは前向きだ。デジタル庁ができても日本ではITが個人の生活まではなかなか普及しないが、「海外ではすでに未来がはじまっている」とし、デンマークとエストニアの事例を紹介した。

 デンマークでは、役所と国民の間の紙のやりとりをなくしたという。幸福度はフィンランドと1位、2位を争う(日本は62位)。

 デンマークでは、15歳以上の国民は、11回ネットにアクセスする義務があるという。デジタルができない人には周りが教える。まず家族に頼り、家族に頼れない人は自治体職員や高齢者施設の人が支援する。

 エストニアでは現地の高齢者にアンケートを実施したところ、「電子サービスを利用している」人は84%。「デジタル化で暮らしの幸福度は向上した」と答えた人は93%もいた。

 世界はすでに変わっている。若宮さんにデジタル庁を率いてもらいたいと思った。

 

 古稀式。受けた講義でそれぞれの印象は異なると思うが、私は古稀式と学びの組み合わせは、国の制度になればいいと思った。

 18歳成人になったら、被害にあわず、責任をもった消費ができるような教育を実施したい。ほとんどの人が会社を退職する古稀は、今回のようなさまざまな学びのコースを受講すべきだろう。

 今回の古稀式は、高齢者かのありようを変えるかもしれない面白い企画だった。

 

 

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映画「つむぐもの」

 犬童一利監督の映画「つむぐもの」を観た。

 韓国人女性のユナがワーキングホリデーで、日本の和紙職人の工房を訪れるが、職人は脳の病気で手が不自由になり、要介護状態に。結果的に彼女はヘルパーの役割をせざるを得なくなる。

 介護施設にも所属して職人の世話をするが、言葉が通じない中でも、次第にユナと職人の剛生は、心が通い合ってくる。酒を酌み交わしたり、郊外へ出かけたり…。

 ユナの介護は「安全につつがなくこなす」介護ではない。剛生の和紙への想いを理解したうえで、剛生の生きる喜びを引き出すような介護を始める。それを、家族は全く理解できないが、要介護状態になっても、人として素のままで触れてくれるユナの心遣いに、剛生も、不自由な体を使い、生きる力を振り絞って最後の和紙作りに挑む。

 介護は辛いもの。だから頑張ってと、仲間の介護福祉士が言うと、「タケオの介護は楽しいよ」と答えるユナ。目先のことにとらわれて、大切なものを見失っている可能性のある、要介護者を世話する人たちに、ぜひ見てほしい映画だった。

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松本すみ子さんの死を悼む

 シニアライフアドバイザーの松本すみ子さんが、今月3日、亡くなった。最近は、東京セカンドキャリア塾アクティブシニアコースの講師をされており、ゼミ生である土屋和子さんに、昨日、松本さんが亡くなられたことを聞いた。

 心臓発作で救急車を呼んでいる最中に意識がなくなり急性心不全でなくなったとのこと。弟さんがいらっしゃるようだが、葬儀についてはまだ決まっていないらしい。

 1月23日に、土屋さん、落合惠子さん(以上未来シニアユニットを組んでいる仲間)と、松本さんで、東京・中野のGOOD MORNING CAFEでランチを楽しんだばかり。お目にかかったのは久しぶりだったが、お若くて、元気はつらつ。「また、ラジオ番組を作りたい」「シニア世代の恋愛小説が面白い」などと話されていたので、まさかの訃報に衝撃を受けた。

 松本さんが代表取締役を務めるアリアのホームページにある略歴を引用する。

松本すみ子略歴

有限会社アリア代表取締役、NPO法人シニアわーくすRyoma21理事長 シニアライフアドバイザー、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント

1950年生まれ、宮城県出身。早稲田大学第一文学部東洋史学科卒業。20数年間、IT企業にて、広報、販促、マーケティングなどを担当。2000年5月に独立し、(有)アリアを設立。産業カウンセラー、シニアライフアドバイザーなどの資格を生かし、シニア世代にライフスタイルの提案と情報提供などを開始。また、 団塊世代の動向研究、シニア市場に参入したい企業のコンサルティング、調査研究受託、広報支援などを行う。

【著書】
『地域デビュー指南術~再び輝く団塊シニア~』(東京法令出版)2010年7月
『そうだったのか!団塊マーケット 本気で取り組むビジネス戦略』(経済法令研究会)2007年3月、同年10月韓国語版出版
『心理系の仕事を見つける本』(中経出版社)2003年
『つまらない毎日なら、好きなことで独立しよう』(明日香出版)2001年 など

 松本さんとの出会いは、私がラジオ会社にいた2011年10月に、超高齢社会の生き方を論じる1時間番組(土曜夜21ー22時)を作った時に遡る。

 30分のゲストインタビューと、15分のトーク2つで構成していた。

 トークは、コンサルタントの岩崎日出俊さんによる、定年後年金前のお金の話(タイトルは岩崎日出俊の生涯現役!)と、松本すみ子さんの「松本すみ子のルート"60’s" 」。定年後のライフスタイルについて、現役の人たちにアドバイスする企画だった。


 タイトルと簡単な内容の紹介をしようーー。

2011年10月

第1週「シニアとは」 ーーシニアには厳密な定義ない。使う人の都合で使われる。マーケットでは多くは50歳以上に使われるが、50代でシニアと言われる人はショックではないか。 

第2週「年金兼業生活のススメ」 ーー「年金兼業生活」とは、再就職や再雇用ではない。雇われない生き方だ。年金をもらいながら、地域社会で社会貢献的な、人に喜ばれる活動をして収入の道を確保すること。 " 
第3週「『シングルシニア』の増加を考える」 ーー70代、80代にもなると、夫や妻が先に亡くなって、シングルになるのは自然な姿。しかし、そういう高齢者ではなく、もっと若いシニア世代のシングルが増えている。 
第4週ーー「小説『団塊の世代』を読んだことがある?」 著者が堺屋太一さんで、小説のタイトルがそのまま「団塊の世代」の総称になったことぐらいは、皆さん知っているようだ。でも、当の団塊の世代も含めて、読んだことがあるという人は少ない。 
第5週ーーアクティブシニア紹介①「NPOが運営するシニアによるシニアのための居酒屋」 おそらく日本で初めての「NPOが運営する居酒屋」が2010年5月に仙台にオープンした。居酒屋の名前は「井戸端会議」。 

11月

第1週「シニアの居場所 ~再雇用・再就職編~」 ーー内閣府の調査によると、高齢者の4人に1人が"生涯現役志向"。しかし、再雇用制度はうまく機能しているのだろうか。 
第2週「シニアの居場所 ~資格取得編~」 ーー就職に有利になればと、定年前後に資格取得に励むシニアがいる。あわよくば定年後はその資格で食べていければ...という希望もあるようだ。 
第3週「シニアの居場所 ~生涯学習編~」 ーー以前から、カルチャーセンターは中高年世代の受講者が多く、学びながら、時間を過ごす場所として定着していた。最近はそれが大学に拡大。大学での生涯学習の形が多彩になってきた。 
第4週「シニアの居場所 ~定年後の夫婦の姿~」 ーー同居後20年以上の熟年夫婦の離婚が増加している。平成19年に、離婚時に厚生年金を分割できる制度ができてから、定年離婚というのが話題になったが、これも影響したようだ。2006年に、団塊の妻500人を対象に「夫のリタイア後、どうしたいか」というアンケートをしたことがある。結果は、「別居や離婚を考えている」は3.6%だった。 

12月

第1週「ほっとエイジが取り組む震災ボランティア」 ーー3月の東日本大震災。ほっとエイジ世代は「足手まといになるばかり」と、せいぜい義援金をだしたり、現地の産品を買ったりという程度にとどまることが多いが、ほっとエイジ世代でも取り組める活動もある。 
第2週「コミュニティサロンが動き出してる?」 ーーコミュニティサロンは、高齢者の生活支援、子育て中の若いお母さんたちの支援などの場となっている。 
第3週「デパートはやっぱり楽しい!」 ーーデパ地下のイートインインコーナーや、売り場以外のくつろげる場所の充実。シアニとって、百貨店は、ありがたい居場所だ。 
第4週「2011年私のトップニュース」その1 ーー「私の2011年」についての、リスナーの投稿を紹介。東日本大震災で感じたこと。2011年にチャレンジしたことなど。 
第5週「2011年私のトップニュース」その2 ーー「私の2011年」についての、リスナーの投稿を先週に引き続き紹介。人生悲喜こもごも。 " 

2012年1月

第1週「ほっとエイジ世代にとってのIT」ーー IT機器は、実はハンディある高齢者にこそ役立つもの。ITをぜひ、使いこなしましょう! 
第2週「音楽は人生」 ーーシニアバンドがブーム。アラ還世代のデビューも。 
第3週アクティブシニア紹介②「夫婦で地域密着型ショップを経営」 ーー東京杉並区にある「しぇあ~どぷれいす高井戸」。ご夫婦それぞれの店が同居している。木下利信さんと百合子さんが2010年8月に開いた。2人とも63歳の団塊世代。 
第4週「食はコミュニケーション」 ーー食の楽しみは食べ物だけではない。どんな場所で、誰と、どのような状況で食事をするかがとても重要。震災後、家族で食卓を囲む機会が増えたという人たちがいる。家族の絆を確かめる場。最近はシェフが腕を奮うオープンキッチンのレストランを備えた老人ホームもある。雰囲気でも食欲増進。 

2月

第1週「自分の本を出版したい!」 ーー自分の本を出版したいというシニアは多い。どのようにすれば、そんなチャンスがつかめるのだろうか。 
第2週「ほっとエイジのコンビニ活用法」ーー コンビニは中高年向けにも、買い物の楽しさを提供することが大切では?その具体策は――。 
第3週「ほっとエイジの旅のカタチ:海外ロングステイ」 ーーほっとエイジ世代はありきたりのツアーでは満足できなくなっている。そこで最近、ほっとエイジ世代の間で海外ロングステイへの関心が高まっている。 
第4週「いまだから考えたい幸福論」 ーー今日は、話題の幸福論について考えてみたい。年齢によっても、人生経験によっても、幸福の感じ方は違う。ほっとエイジの幸福の捉え方とは? 

3月

第1週「家事代行サービスでラクラク生活」 ーー歳をとって体力・気力が衰えると、意外に億劫になるのは家事。ご主人が定年後に自宅にいるようになって、3度3度の食事を作らなければならなくなると、奥さんの負担は増す。今は世の中に便利なサービスがいろいろと出てきているので、うまく利用して、人生を楽しみましょう。 
第2週「ほっとエイジに人気のスポーツ」 ーー日経産業地域研究所が昨年9月に発表した調査では、健康のために心がけていることは「運動・スポーツ」が最も多く、42%。リタイア後の60代では男性は55%、女性も48%。 
第3週「日本の高齢化、世界の高齢化」 ーー1月30日に厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した、50年後の日本の「将来推計人口」によると、2060年の日本の人口は約8674万と、2010年に比べると4132万人(32%)も減る。 
第4週「今さら聴けない"NPOって何?"」 ーーこのあたりで一度、NPOとは何かをおさらい。リタイア後に何か活動しようとする時に、NPOという形を知っているのと知らないのでは、何かと大きな差がでてくるかもしれない。 " 
第5週アクティブシニア紹介③「定年後に一人で始めた介護タクシー」 ーー大手システム開発会社に勤めていた荒木正人さん(62歳)。50歳を過ぎて、定年を意識。体力も資金も余裕のあるうちにと、準備を始めた。大好きな車を使って定年後に何かできないかと考えた末、介護タクシーの開業を目指した。 

 松本さんは、週4日、テーマ別テーマでゲストにインタビューする第二期の「集まれほっとエイジ!」にも出演してくれた。

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 月曜日の「目指せ!生涯現役」

8月13日松本すみ子さん(シニアライフアドバイザー)「地域デビュー」ーー 「男性はなかなか地域に溶け込めないが、地域にはリタイアした男性の活躍の場が実は多い。まずは地域を歩いて、自分に何ができるかを考えるべきだ」とアドバイス。 
8月20日松本すみ子さん(シニアライフアドバイザー)「地域デビュー」 ーー少子高齢化、若者の就労対策、外国人対策、街づくり、文化振興…。地域が解決しなければならない課題はとても多く、「こうした場でシニアの経験が生かせる」。自治体とNPO、企業とNPOなどが連携する際のコーディネーターとしても企業出身者が求められている。 


12月3日松本すみ子さん(シニアライフアドバイザー)「NPOの作り方」 ーー地域デビューやシニア問題で活躍しているNPOを紹介。 
12月10日松本すみ子さん(シニアライフアドバイザー)「NPOの作り方」 ーーNPOの作り方を具体的に指南。 

 この番組は松本さんも気に入ってくださっていて、「またラジオやりたいわね」とおっしゃっていた。

 その遺志を継いで何かやりたいものだ。

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とうとう高齢者!

 11月20日に65歳になって、30日には41年あまり勤めていた会社を退職。これまで1本道を進んできたが、目の前に10本も20本も道が現れ、戸惑っている。そんなときに、群馬県時代からお付き合いのあるKazuさんと 高校の同窓会活動を10年一緒にやってきたKeiさん(みなシニア)と東京・下北沢でランチをして、互いに触発され、昨日、「未来シニア」というユニットを結成した。

 「残る寿命が少なくなってきた」のは事実だが、「下り坂をどんどんおりていく」というのはイメージとして暗すぎる。65歳で年金暮らしとなり、「健康で文化的な最低限度の生活」ができるようになったのだから、お金を稼ぐために組織に属して、組織の流儀に染まる必要はもうなくなった。ならば、自由に、自立した個人として、なんでもできる可能性のある未来に進もう、ということで、意見が一致した。

 面白いのは、個々ばらばらに活動する。フェイスブックページもそれぞれが勝手に更新する。けれど、何かやりたくなったら、一緒にやりましょうというユニットだ。

 この考え方はダニエル・ピンクの「フリーエージェント社会の到来」に書かれていた考え方だ。

 フリーエージェントとは、普段は自由に活動しているのだが、呼びかけれれれば、協力して何かを一緒に作り上げるような人を指す。

 例えば、映画は、作品ごとに監督のもとに、撮影、照明、役者らが集まって一本を撮り終えるが、そんな感じのつながりをフリーエージェントは好む。

 我々は、監督さえいない。

 それぞれが自由に力を発揮するが、指揮命令系統がない。上下関係がない。

 2人で意見が分かれると、そこでお別れかもしれないが、3人は絶妙のユニットだ。他の人がそれぞれに自由に発信しているのを見て、触発されて、アイデアが浮かんだら「こんことやらない?」と誘い合い、議論して、始める。

 そんなことでまずは個々のパワーアップ。「負けてはいられない」と2人が思うように、いろいろやるぞ。

 ということで、「とうとう高齢者!」を始めた。

 よろしくお願いいたします。

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やるべきことの「見える化」

やるべきことがたまってきて、収拾できなくなりつつある。

同窓会のホームページの更新。役員がかわったのに、旧役員のままだ。自分自身も副会長になったのに。先輩にインタビューした原稿も、アップしていない。

2年後の100周年記念誌の編集担当なのに、半年くらい何も準備が進んでいない。推進体制すらできていない。

農園に行っていない。きゅうりはもう枯葉状態。片付けないと。

親が大腿骨警部骨折で入院した際の保険の請求をまだしていない。そのあと、親が亡くなった後の諸手続きもほどんど何もしていない。

夜の犬の散歩、まだしていない。

茶道は7月の稽古に忙しくて出られず、8月は休み。少しは動画で復習しなければと思うのだが、何もしていない。

ポケモンGO、きょうは忙しくて、「レイドバトル」はしていないが、ラッキーがとれる「タスク」を近くのポケストップまで取りに行きたい。

個人事務所を設立したのだが、税務署に届け出ただけで、中身は何もない。活動が進んでいない。

本を書きたいと思って、狙いや構成、市場などについて書き始めたが、まだ半分もできていない。

会社の仕事だけは、ちゃんとこなしている。

結局、「会社の仕事だけ」なのだ。

どんなに給料が減っても、会社の仕事に対するこの真剣な向き合い方は何なのだろう。

他のことはどうでもいいと思っている?

書いてみるとどうでもいいことばかりだけれど(笑)。

やるべきことの「見える化」は大事だ。

それぞれに手をつけるために、少し部屋を片付けよう。

今日は片付けの「さわり」で終わりかな。

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産みの苦しみ

2016年11月末に会社を定年退職ーーしたのだが、昨今は再雇用というのがあって、同じ仕事をしているので(正社員から非正規雇用になって労働時間が減り、収入が激減したものの)、見た目はあまり変わらない毎日を送っている。

定年の翌日も仕事を続けるので、後輩たちが作ってくれたアーチの下をくぐりぬけてお別れをするような、映画で見た退職の際の儀式は経験していない。けじめなく、ぬるーい感じの時間が流れている。
仕事量が減って、1つひとつの仕事が丁寧にできるようになったし、自由時間も増え、そんなに悪くはない毎日というのが正直なところ。けれども、内館牧子著「終わった人」で言うように「成仏していない」感じを引きずる。

この気持ちも含めて、定年後について、何かを書こうと思うのだが、そう思うだけで先に進まない。会社でノルマのようなものを課せられて、やっと動いていたのかもしれない。操り人形。幼稚園に入った頃から、与えられたスケジールをこなすのを中心とする生き方に慣れてしまっていて、何をしてもいいと言われると、固まる。定年後は自立して、何かを生み出したいーーとでも言わないと格好がつかないと思っているだけかもしれない。
今回のタイトルは「産みの苦しみ」だが、少しも本気で生み出そうとはしていないのかもしれない。ブログを書くのを怠けている言い訳として、「実は水面下ではがんばっている。今は産みの苦しみ」と書こうと思ったのだが、今の自分を正直に見つめると単なるナマケモノにすぎない。

ということで、ブログは麻雀で高い手を上がったり、面白い本を読んだ時に、たま〜に書こうとは思うが、この怠惰病が治るまで、休業状態が続きそうだし、そのうち、死んでしまい自然消滅になるかもしれない。

近況として、いま、時間を割いてしていることを並べるとーー。
茶道
農業
同窓会
ポケモンGO
再雇用の仕事
読書
料理
犬の散歩

そして。最近、解放されたこと
親の介護
子育て

やりたいのにやれていないこと
麻雀
美味しいものを食べること
旅行
スポーツ

人生、残り少なくなると、やりたいことが多くなって、処理しきれず、パソコンのようにフリーズしている、という側面もあるのかもしれない。単なる怠け、ではなく。

体力も落ちてきたし。

ブログを長らく空白にしていた、その理由のようなものを書いた。
でも、ブログももっと自由に、気ままに書けばいいのかもしれない。

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リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著『ライフ・シフト〜100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)

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 リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著『ライフ・シフト〜100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社、2016年11月3日発行)は、超高齢社会での生き方を戦略的に語った、最初の本かもしれない。日本人がこうした本を書けないのはなぜだろう?と思うくらい、超高齢社会に突入した日本の現状も理解し、明確な提言をしている。



 「日本語版への序文」で著者は言う。「日本では、長寿化の負の側面が話題にされがちだ。この変化を恩恵ではなく、厄災とみなす論調が目立つ。本書では、長寿化の恩恵に目を向け、どうすれば、個人や家族、企業、社会全体の得る恩恵を最も大きくできるかを中心に論じたい」「20世紀に、日本の社会と経済は大きな変貌を遂げた。長寿化は、21世紀に同様の大きな変化を日本にもたらすだろう。この先、多くの変化が日本人を待っている」「日本は早急に変化する必要がある。時間は刻一刻減っていく。日本の政府に求められることは多く、そのかなりの部分は早い段階で実行しなくてはならない」「しかし、最も大きく変わることが求められるのは個人だ。あなたが何歳だろうと、いますぐ新しい行動に踏み出し、長寿化時代への適応を始める必要がある」「問題は、多くのことが変わりつつあるために、過去のロールモデル(生き方のお手本となる人物)があまり役に立たないことだ」



 「選択肢を狭めずに幅広い選択肢を検討する『エクスプローラー(探検者)』のステージを経験する人が出てくるだろう。自由と柔軟性を重んじて小さなビジネスを起こす『インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)』のステージを生きる人もいるだろう。さまざまな仕事や活動に同時並行で携わる『ポートフォリオ・ワーカー』のステージを実践する人もいるかもしれない」「このように選択肢が増えれば、人々はもっと自分らしい人生の道筋を描くようになる。同世代の人たちが同時に同じキャリアの選択をおこなうという常識は、過去のものになっていく」



 「長寿化を恩恵にするためには、古い働き方と生き方に疑問を投げかけ、実験することをいとわず、生涯を通じて『変身』を続ける覚悟をもたなくてはならない」「60歳以上の人は突如、長寿化の恩恵を手にすることになる。新しい機会が開ける半面、若い頃に想像していたより高齢になるまで働き、収入を得続ける必要が出てくる。若者たちのメンターやコーチ、サポーターを務めることがあなたの主たる役割になるかもしれない」



 日本語版序文を読むだけですっかり惹きつけられてしまったが、新しい行動に踏み出さなければ立ちいかなくなる理由や、人生100年時代の生き方のヒントが読み進めるにしたがって、具体的に示されていく。



 まず、どのくらいの資金を確保すべきで、それをどのように確保すべきか。「少なくとも最終所得の50%の資金は確保したい。勤労期間におこなう貯蓄も、所得の10%前後が現実的だろう。そうなると、80代まで働き続ける必要がある」。しかし、「80歳を超すまで休暇もなく、サバティカル(長期間仕事を離れて、学校に通ったり、ボランティア活動などをしたりして過ごす期間)もなく、柔軟な働き方もせずに、ノンストップで働き続けられるひとなどいるのだろうか?」



 柔軟な働き方について、本書は「多数の雇用を創出し、マネジメント職を提供できるのは今後も主として大企業だが、そのほかに、中小の新興企業で専門性の高い職や柔軟な働き方が生まれる」と予測する。「スキルを買いたい企業と働き手をつなぐテクノロジーは、ますますグローバル化し、安価になり、洗練されつつある。そうした仲介の仕組みはすでに増えはじめており、それが最近話題の『ギグ・エコノミー』や『シェアリング・エコノミー』の到来をもたらしている。テクノロジーの進化により情報のコストが下がった結果、買い手と売り手が互いを見つけやすくなり、独立した情報源から相手の信頼性と品質を判断しやすくなったのだ」「フルタイムやパートナーで雇われて働くのではなく、次々と多くの顧客の依頼を受けて働くことで生計を立てるーーそういう働き方をする人が増えるのがギグ・エコノミーだ」「大企業は小規模なグループや個人にアイデアやイノベーションを頼り、小規模なグループは互いの力を借りて事業の規模を拡大させ、広い市場に進出するようになる」



 一方で、本書は、「お金と仕事だけを見ていては、人間の本質を無視することになる。長寿化のもたらす恩恵は、基本的にはもっと目に見えないものだ」として、無形の資産の増減に注意を傾けるべきだとする。



 無形の資産とは⑴生産性資産ーー人が仕事で生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素のことだ。スキルと知識が主たる構成要素(2)活力資産ーー肉体的・精神的な健康と幸福のことだ。健康、友人関係、パートナーやその他の家族との良好な関係などが該当する(3)変身資産ーー100年ライフを生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験し、多くの変身を遂げることになる。そのために必要な資産が変身資産だ。自分についてよく知っていること、多様性に富んだ人的ネットワークをもっていること、新しい経験に対して開かれた姿勢をもっていることなどが含まれる。



 本書はこの後、いくつかのシナリオを示し、「お金の面での難題を克服でき、しかも無形の資産を支えられる」かどうかを検証する。そこで浮かんでくるのが、エクスプローラー、インディペンデント・プロデューサー、ポートフォリオ・ワーカーなどのいくつかの新しいステージだ。こうした新ステージを加えた「マルチステージの人生を生きるためには、これまで若者の特徴とされていた性質を生涯通して保ち続けなくてはならない。その要素とは、若さと柔軟性、遊びと即興、未知の活動に前向きな姿勢である」と本書は強調する。



(1)エクスプローラー(探検者):一カ所に腰を落ち着けるのではなく、身軽に、そして敏捷に動き続ける。このステージは発見の日々だ。旅をすることにより世界について新しい発見をし、あわせて自分についても新しい発見をする。多くの人にとって、このステージを生きるのにとりわけ適した時期が三つある。それは18〜30歳ぐらいの時期、40代半ばの時期、そして70〜80歳ぐらいの時期である。これらの時期は人生の転機になりやすく、エクスプローラーの日々は、見違えるほどの若さを取り戻せる機会になりうる。



(2)インディペンデント・プロデューサー(独立生産者):インディペンデント・プロデューサーは基本的に、永続的な企業をつくろうと思っていない。事業を成長させて売却することを目的にしていないのだ。このステージを生きる人たちは、成功することよりも、ビジネスの活動自体を目的にしている。こうした生き方をしたい人たちにとっては、企業体を築き、金銭的資産を蓄えることより、組織に雇われずに独立した立場で生産的な活動に携わるためにまとまった時間を費やすことが大きな意味をもつ。組織に属さずに主体的に働くことは、ライフスタイルを維持し、同時に生産性資産と活力資産を支えるための有効な方法だ。彼らは都市の集積地(クラスター)に集まって生活し、独特のライフスタイルを形づくって生活と仕事をブレンドさせている。年長世代の起業家たちは油断なく知的財産を守ろうとしてきたが、新しい世代のインディペンデント・プロデューサーたちは知的財産を公開し、ほかの人たちとシェア(共有)することを重んじる。



(3)ポートフォリオ・ワーカー:ポートフォリオ・ワーカーへの移行に成功する人は、早い段階で準備に取りかかり、フルタイムの職に就いているうちに、小規模なプロジェクトを通じて実験を始める。自分がなりたいポートフォリオ・ワーカーのロールモデルを見つけ、社内中心の人的ネットワークを社外の多様なネットワークに変えていく。



 本書は終章で、「変化の担い手になるのは、企業でもなければ政府でもない。・・・その担い手は私たちだ」と述べている。「長寿化の試練とチャンスを前にして、個人や夫婦、家族、友人グループが実験し、既存のやり方を壊し、それを再構築し、意見を交わし、議論を戦わせ、苛立ちを覚える必要がある」「多くの人が行動を起こし、議論することによって生まれるのは、生産的な人生を送るための新しい模範的なモデルではない。柔軟性と個人の自由を求める思いが人々に共有されるようになるのだ」「企業と政府が標準化されたシンプルなモデルを好むのに対し、個人は柔軟性と選択肢を拡大させようとする」。



 日本における超高齢社会の議論は、政府や企業に対応を求めるものばかりだ。これに対し、本書は、「担い手は私たちだ」と宣言する。そして、リスクは抱えながらもチャレンジする個人のみが、長寿化の恩恵に浴することができるのだ。









































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リンダ・グラットン著『ワーク・シフト』(プレジデント社)

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 リンダ・グラットン著『ワーク・シフト』(プレジデント社、2012年8月5日発行)は、ダニエル・ピンク著『フリーエージェント社会の到来』と並ぶ、働き方の未来(本書では2025〜2050年くらいを想定)を指し示してくれる良書だ。

 著者は「産業革命の前と後で世界は大きく様変わりしたが、私たちの息子たちの世代が経験する変化もそれに匹敵するくらい劇的なものになる」と言う。そして、「産業革命の原動力が石炭と蒸気機関という新しいエネルギーだったのに対し、これから起きようとしている変化を突き動かすのは、五つの要因の複雑な相乗効果だ」として、①テクノロジーの進化②グローバル化の進展③人口構成の変化と長寿化④社会の変化⑤エネルギー・環境問題の深刻化ーーを挙げる。

 もちろん、変化の要因を挙げるだけでは未来を語ることはできない。著者は「五つの要因の悲観的な側面をことさらに強調したシナリオを描くこともできる。それは、人々が孤独にさいなまれ、慌ただしく仕事に追われ、疎外感を味わい、自己中心主義に毒される未来だ。私たちの行動が後手に回り、五つの要因の負の力が猛威を振るう場合に実現するシナリオである」とし、このような未来を「漫然と迎える未来」と呼ぶ。

 「対照的に、五つの要因の好ましい側面を味方につけて、主体的に未来を切り開くこともできる。このような未来では、コラボレーションが重要な役割を担い、人々は知恵を働かせて未来を選択し、バランスの取れた働き方を実践する」として著者が提案するのが、「主体的に築く未来」だ。

 著者は言う。「まず必要なのは、あなたの頭の中にある固定観念を問い直すことだ。私たちは誰でも、未来についてなんらかのイメージをいだいている。そのイメージに従って、さまざまな決断をくだし、選択をおこなってきたはずだ。しかし、そのイメージが間違っているおそれはないのか。あなたは誤った未来イメージに引きずられて、誤った道を歩んでいないか」。

 「未来に押しつぶされない職業生活を築くために、どのような固定観念を問い直すべきなのか。私たちは三つの面で従来の常識を<シフト>させなくてはならない」として、著者は「第一に、ゼネラリスト的な技能を尊ぶ常識を問い直すべきだ」「第二に、職業生活とキャリアを成功させる土台が個人主義と競争原理であるという常識を問い直すべきだ」「第三に、どういう職業人生が幸せかという常識を問い直すべきだ」と語る。

 以上の流れで本書はまとめられている。

 さらに詳しく見てみよう。まずは五つの要因について。

 ①テクノロジーの進化:テクノロジーの進化は、いつも時間に追われて孤独を味わう「漫然と迎える未来」の暗い側面を生み出す要因である半面、コ・クリエーション(協創)と「ソーシャルな」参加が拡大する「主体的に築く未来」を招き寄せる要因にもなりうる。

 ②グローバル化の進展:優秀な人材が世界を舞台に活躍できるようになるという好ましい影響が生まれる半面、競争が激化し、人々がますます慌ただしく時間に追われるようになるという負の影響も生まれる。

 ③人口構成の変化と長寿化:この要因は、ある面では明るい材料をもたらす。人々が健康で長生きするようになり、80歳代になっても生産的な活動に携わり続ける人が増える。協力関係を重んじる環境で育ったY世代(=1980〜95年頃の生まれ)の影響力が強まれば、仕事の世界でコラボレーションが活発になる。移住が盛んになれば、特定の地域に有能な人材が続々と結集し、イノベーションが加速される。しかし、暗い側面もある。90歳代や100歳代まで生きるのが当たり前になれば、老後の蓄えが十分でなく、生活の糧を得るために働き口を探さなくてはならない人が増える。移住が盛んになれば、家族やコミュニティが引き裂かれて孤独にさいなまれる人が多くなる。

 ④社会の変化:具体的に例示されているのは次の七つ。①家族のあり方が変わる②自分を見つめ直す人が増える③女性の力が強くなる④バランス重視の生き方を選ぶ男性が増える⑤大企業や政府に対する不信感が強まる⑥幸福感が弱まる⑦余暇時間が増えるーー社会の変化の要因は、五つの要因のなかで好ましい結果をもたらす可能性が最も高い。一人ひとりの行動と選択で結果が変わる余地が最も大きいからだ。

 ⑤エネルギー・環境問題の深刻化:「持続性を重んじる文化が形成されはじめる」という側面は、私たちの働き方に大きな影響を及ぼすだろう。つまり「エネルギー効率の高いライフスタイルが広まって、贅沢な消費に歯止めがかかる」といった変化が予想される。

  三つのシフトについては詳細な記載があるが、ポイントをまとめると以下のようになる。

 第一のシフト〜ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ:ゼネラリストと会社の間には、社員がその会社でしか通用しない技能や知識に磨きをかけるのと引き換えに、会社が終身雇用を保障するという「契約」があった。・・・問題は、そうした旧来の終身雇用の「契約」が崩れはじめたことだ。ゼネラリストがキャリアの途中で労働市場に放り出されるケースが増えている。そうなると、一社限定の知識や人脈と広く浅い技能をもっていても、大した役に立たない。

 第一のシフトに関しては次の二つの資質が重要と著者は語る。(1)専門技能の連続的習得ーー未来の世界でニーズが高まりそうなジャンルと職種を選び、浅い知識や技能ではなく、高度な専門知識と技能を身につける。その後も必要に応じて、ほかの分野の専門知識と技能の習得を続ける。(2)セルフマーケティングーー自分の能力を取引相手に納得させる材料を確立する。グローバルな人材市場の一員となり、そこから脱落しないために、そういう努力が欠かせない。

 第二のシフト〜孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」:関心テーマごとに、世界規模のコミュニティが形成される。そうした巨大なオンラインコミュニティは、未来の世界で重要性を増す「ビッグアイデア・クラウド(大きなアイデアの源となる群衆)」の土台になる。ビッグアイデア・クラウドは、自分の人的ネットワークの外縁部にいる人たちで構成されなくてはならない。友達の友達がそれに該当する場合が多い。しかし、ビッグアイデア・クラウドだけでは不十分だ。・・・アドバイスと支援を与えてくれる比較的少人数のブレーン集団が不可欠だ。それが・・・「ボッセ(同じ志をもつ仲間)」である。ボッセは・・・声をかければすぐに力になってくれる面々の集まりでなくてはならない。また、メンバーの専門性や知識がある程度重なり合っている必要がある。専門分野が近ければ、お互いの能力を十分に評価できるし、仲間の能力を生かしやすい。ボッセのメンバーは以前一緒に活動したことがあり、あなたのことを信頼している人たちでなくてはならない。

 第三のシフト〜大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ:<第三のシフト>を実践すれば、仕事が大量消費のための金を稼ぐ手段ではなく、充実した経験をする機会に変容するのである。・・・古い仕事観のもとでは、仕事とは単にお金を稼ぐことを意味していたが、未来の世界では次第に、自分のニーズと願望に沿った複雑な経験をすることを意味するようになるのかもしれない。・・・<シフト>を行うことは、覚悟を決めて選択することだ。たとえば、ボランティア活動やリフレッシュをする際に長期休暇を取るのと引き換えに、高給を諦めるという選択をしたり、さまざまなリスクを承知の上でミニ起業家への道を選択したり、家族や友人と過ごす時間を確保するために柔軟な勤務形態やジョブシェアリング(一人分の仕事を複数の人間で分担する勤務形態)を選択したりする。

 自ら動かなければ、思うような未来は築けない。仕事の未来は、自ら作っていくという、強いメッセージを感じる本だった。

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落合恵子著『自分を抱きしめてあげたい日に』(集英社新書)

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 落合恵子著『自分を抱きしめてあげたい日に』(集英社新書、2012年8月22日発行)を読んだ。

 一篇の詩、一冊の絵本がこんなにも力を持っているのか、と思わせる作品を紹介している。「本書が、あなたにとって、再生に向けての小さな『生の球根』になってくれたら……。」と落合さんは言う。

 詩人・長田弘さんの花を持って、会いにゆく」という詩の一節を紹介、「そうだったのだ、『けっしてことばにできない思いが、ここにあると指すのが、ことばだ』ったのだ。何もかも言葉にかえることはないのだ、と詩人の『ことば』が教えてくれた」。

 平凡で非凡なひとたち、というタイトルで絵本を3冊紹介する。

 「石に魅せられた、ひとりの男の一生を淡々と、けれど力強く描いた絵本」。

 そして『雪の写真家 ベントレー』という雪の結晶を取り続けた男の話を紹介した絵本。

 「誰かに評価されることを目的としない日々の、なんと清々しく豊かなことだろう。人生を誰かと比べることの、なんとさびしいことだろう」と落合さんは言う。

 「水底状態にいるとき、わたしが好んで読むのは、古今東西の言葉たちだ。女性の言葉がほとんどだ」「女性たちはどのようにして、自らの『水底』と向かい合ってきたか。そして浮上してきたのか」「内外の女性たちが紡ぐ言葉たち。そこにこめられた思い、記された言葉と言葉の間に隠されたUnspokend words(語られなかった言葉)だち」。そして、処方餞別に20の詩yや評論を紹介する。

 「社会は危険と矛盾を生産し続ける一方、それらへの対処は個人に押しつける。……2001年に翻訳刊行されたジークムント・バウマンの『リキッド・モダニティ――液状化する社会』(森田典正訳、大月書店)のこの一節に出会った時、思い出したのは『自己責任』という、一時、わたしたちのこの社会を席巻したあの言葉である。社会が、バウマンの言葉を借りるなら『生産しつづける』危険や矛盾はすべて、個人に押しつけられ、個人の責任とされる」。

 後半は映画や音楽、記憶のなかの出来事も加わって、縦横無尽に展開。セイ!ヤング時代の落合恵子さんのようだ。

 そして最後に、OTHER  VOICESについて語る。

 「別の声、別の価値観という意味だ。周縁、周辺の声という意味もあるだろう。つまり主流でない声のことでもある」「OTHER  VOICESに耳を傾けられる社会こそが、誰にとっても風通しのいい関係性を築くうえで、かけがえのないポイントになるはずだ。社会の文化的成熟とは、そういうことからはじまるのだとわたしは考える」。

 途中から混沌としてきて、面白かった。

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落合恵子著『おとなの始末』(集英社新書)

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 落合恵子著『おとなの始末』(集英社新書、2015年11月22日発行)を読んだ。

 「70歳になった。」という書き出し。そろそろ人生のまとめに入る年齢ということで「おとなの始末」という本を書かれたのかと思って読み進めると、ちょっと違う。

 「ある年齢になったら自動的に『おとな』になるわけではないし、また、どんなに多くの体験を重ねても、それを自分に引き寄せ、引き受けることができなければ『おとな』とは言えないとも考える」「おとなとは、『引き寄せ・引き受ける』ことのできるひとのことなのかもしれない」「さらに、生きていくことに対する、自分なりの答えの出しかた、を知っていることとも言える」

 「30代から、うっすらと自分の最期を考える機会をいくつか体験した」「自分の最期について思いを巡らす『ある年代』が、このように人生のわりと早い時期に来るひともいるだろうし、定年後やもっと後になってというひともいるのだろう」「自分が死について意識した時が来たら、そのきっかけをしっかりとつかまえたい。同時にそれは、交友関係も含んだ自分の日常、生きかたというか、生きる姿勢を見直すチャンスでもある」

 「人生の『始末』は、本来、年齢にかかわらず意識しないといけないものでもあるだろう。ひとはみな生まれた時から死に向かって歩いていくのだから」「ほとんどの人は、重い病気になったり、事故に遭ったり、高齢者にならないと、『自分がいつかは確実に死ぬ』という意識からは自由だ。それでいいのだと思う」「けれども、たとえ自分が望まなくても30代、40代で自分自身の『始末』をつけなければならない時が来ないとは限らない」

 「『始末』とは、生きていくことに対する自分という個の答えの出しかたである。よりよく生きるために開けなくてはならない扉とは、むしろ未知の死へ向かっていく扉とも言える」

 この本は、自分らしい人生を生きるための、おとな論なのかもしれない。「始末」という言葉にとらわれすぎずに読み進めなければならない。

 「自分がいま、執着しているものがあるとしたら、それは自分が生きていくうえで大事なものなのか、いったん立ち止まって考えてみる」「自分の掌で握ることができる、本当にかけがえのないものだけをしっかりと握りしめて、その他のものをいかに『始末』するかをこそ考えなければならない」

 「わたしが自分の人生の『始末』を考えたきっかけのひとつは、30年ほど前、ほぼ同世代の女友だちが40歳を目前にして亡くなったことだった」

 「老いや死というものは、時に手に余る大きなテーマなので、ついつい後回しにしがちだ。それでも、定年退職をする、家族の介助や介護が始まる、子どもたちが巣立って住まいを見直すという人生の幾つかの節目などに、考えるきっかけはあるはずだ」「遺言はひとつの方法だが、そうした機会に、いろいろな『始末』の仕方を考えておくことは、『これからの日々』を生きるうえでも必要なものだ」

 「100パーセントひとりで立つことは素敵だし、理想ではあるけれど、どんなにすっくと立っているつもりでも、どこかで誰かに支えられている、というのが本当のところだろう。その曖昧な輪郭を認めながらも、可能な限り自分で立つことが、わたしがわたしである基本。思想も、姿勢も、である。自分で立っていないと、他社ともつながれない」

 以上、第一章「おとなの始末とはなにか」から引用したが、この後、第二章「仕事の始末」、第三章「人間関係の始末」、第四章「社会の始末」、第五章「暮らしの始末」、第六章「『わたし』の始末、と展開する。

 この中では、「仕事の始末」がとても参考になった。

 「次のことを考えよう。自分がしたいのは仕事なのか、それともいままで仕事が意味してきた、『専念し、熱中できるなにか」であればいいのか、と」「わたしたちが『仕事』と呼んでいるものは、自分が熱くなれて、達成感があり、自己満足もでき、やっていることを誰かに還元できる、それらすべての『象徴』に過ぎない気もする」。

 定年まで一つの企業にいた人にとって仕事はお金を稼ぐ手段であったと同時に、その多くの部分が「生きがい」でもあったはずだ。定年後の再雇用では、仕事は同じであっても、収入が激減し、がっかりする。しかし、「収入も生きがいも」となんでも一つの仕事に求めるのは難しいのかもしれない。仕事は「自分を教育してくれ、社会デビューさせてくれた場でもあった」と割り切り、生きがいは生きがいとして、仮に無収入でも取り組み、生きがい実現のために収入が必要ならば、アルバイトでもなんでもすればいいのではないか、と気づかせてくれた。

 落合さんは「何十年も働き続けてきたのだ。少しの休み時間があってもいいはずだ。急いで、次の椅子をみつけるより、少し時間をかけてみないか。『わたしはいったい、なにをやりたいのか』に」。

 「ある空間における椅子の数は、たいてい決まっている。だから、その椅子を獲得するためには、誰かと争奪戦を展開しなければならない。しかし、争奪戦は時にひとを疲労困憊させる。得ても、失ってもだ。すでにそこにある椅子を自分のものとするために全精力を注ぎこむより、そこにはない、まったく新しい椅子を作るために、そしてそれを自分のものにするために、エネルギーを集中しようと考えるほうがいいのではないか」

 「他者に切実に必要とされることだけをよりどころにするのではなく、自分が豊かになることをやってみる。その結果として誰かが喜んでくれ、それがまた自分の喜びになって返ってくることもまる。そう考えれば『もう必要とされなくなった』という空疎感からも解放されるのではないか」

 11月末で定年退職し、再雇用となったいま、とても心身に染み入る言葉だ。

 そして、「あとがきにかえて」で、

 「『おとなの始末』とは、つまり……。最期の瞬間から逆算して、残された年月があとどれほどあるかわからないが……。カウントすることのできない残された日々を充分に、存分に『生ききる約束』、自分との約束。そう呼ぶことができるかもしれない」

 「生きるなら、『自分を生ききってやろう』という覚悟のようなものが、本書『おとなの始末』の底流に流れる静かな水音と言えるかもしれない」

 とまとめている。

 「人生においてタフなファイターでありたい。同時にデリケートなファイターでありたい、とわたしは考える」

 何を握って人生を生ききるか、を考えたくなる一冊だった。

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