リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著『ライフ・シフト〜100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)

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 リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著『ライフ・シフト〜100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社、2016年11月3日発行)は、超高齢社会での生き方を戦略的に語った、最初の本かもしれない。日本人がこうした本を書けないのはなぜだろう?と思うくらい、超高齢社会に突入した日本の現状も理解し、明確な提言をしている。



 「日本語版への序文」で著者は言う。「日本では、長寿化の負の側面が話題にされがちだ。この変化を恩恵ではなく、厄災とみなす論調が目立つ。本書では、長寿化の恩恵に目を向け、どうすれば、個人や家族、企業、社会全体の得る恩恵を最も大きくできるかを中心に論じたい」「20世紀に、日本の社会と経済は大きな変貌を遂げた。長寿化は、21世紀に同様の大きな変化を日本にもたらすだろう。この先、多くの変化が日本人を待っている」「日本は早急に変化する必要がある。時間は刻一刻減っていく。日本の政府に求められることは多く、そのかなりの部分は早い段階で実行しなくてはならない」「しかし、最も大きく変わることが求められるのは個人だ。あなたが何歳だろうと、いますぐ新しい行動に踏み出し、長寿化時代への適応を始める必要がある」「問題は、多くのことが変わりつつあるために、過去のロールモデル(生き方のお手本となる人物)があまり役に立たないことだ」



 「選択肢を狭めずに幅広い選択肢を検討する『エクスプローラー(探検者)』のステージを経験する人が出てくるだろう。自由と柔軟性を重んじて小さなビジネスを起こす『インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)』のステージを生きる人もいるだろう。さまざまな仕事や活動に同時並行で携わる『ポートフォリオ・ワーカー』のステージを実践する人もいるかもしれない」「このように選択肢が増えれば、人々はもっと自分らしい人生の道筋を描くようになる。同世代の人たちが同時に同じキャリアの選択をおこなうという常識は、過去のものになっていく」



 「長寿化を恩恵にするためには、古い働き方と生き方に疑問を投げかけ、実験することをいとわず、生涯を通じて『変身』を続ける覚悟をもたなくてはならない」「60歳以上の人は突如、長寿化の恩恵を手にすることになる。新しい機会が開ける半面、若い頃に想像していたより高齢になるまで働き、収入を得続ける必要が出てくる。若者たちのメンターやコーチ、サポーターを務めることがあなたの主たる役割になるかもしれない」



 日本語版序文を読むだけですっかり惹きつけられてしまったが、新しい行動に踏み出さなければ立ちいかなくなる理由や、人生100年時代の生き方のヒントが読み進めるにしたがって、具体的に示されていく。



 まず、どのくらいの資金を確保すべきで、それをどのように確保すべきか。「少なくとも最終所得の50%の資金は確保したい。勤労期間におこなう貯蓄も、所得の10%前後が現実的だろう。そうなると、80代まで働き続ける必要がある」。しかし、「80歳を超すまで休暇もなく、サバティカル(長期間仕事を離れて、学校に通ったり、ボランティア活動などをしたりして過ごす期間)もなく、柔軟な働き方もせずに、ノンストップで働き続けられるひとなどいるのだろうか?」



 柔軟な働き方について、本書は「多数の雇用を創出し、マネジメント職を提供できるのは今後も主として大企業だが、そのほかに、中小の新興企業で専門性の高い職や柔軟な働き方が生まれる」と予測する。「スキルを買いたい企業と働き手をつなぐテクノロジーは、ますますグローバル化し、安価になり、洗練されつつある。そうした仲介の仕組みはすでに増えはじめており、それが最近話題の『ギグ・エコノミー』や『シェアリング・エコノミー』の到来をもたらしている。テクノロジーの進化により情報のコストが下がった結果、買い手と売り手が互いを見つけやすくなり、独立した情報源から相手の信頼性と品質を判断しやすくなったのだ」「フルタイムやパートナーで雇われて働くのではなく、次々と多くの顧客の依頼を受けて働くことで生計を立てるーーそういう働き方をする人が増えるのがギグ・エコノミーだ」「大企業は小規模なグループや個人にアイデアやイノベーションを頼り、小規模なグループは互いの力を借りて事業の規模を拡大させ、広い市場に進出するようになる」



 一方で、本書は、「お金と仕事だけを見ていては、人間の本質を無視することになる。長寿化のもたらす恩恵は、基本的にはもっと目に見えないものだ」として、無形の資産の増減に注意を傾けるべきだとする。



 無形の資産とは⑴生産性資産ーー人が仕事で生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素のことだ。スキルと知識が主たる構成要素(2)活力資産ーー肉体的・精神的な健康と幸福のことだ。健康、友人関係、パートナーやその他の家族との良好な関係などが該当する(3)変身資産ーー100年ライフを生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験し、多くの変身を遂げることになる。そのために必要な資産が変身資産だ。自分についてよく知っていること、多様性に富んだ人的ネットワークをもっていること、新しい経験に対して開かれた姿勢をもっていることなどが含まれる。



 本書はこの後、いくつかのシナリオを示し、「お金の面での難題を克服でき、しかも無形の資産を支えられる」かどうかを検証する。そこで浮かんでくるのが、エクスプローラー、インディペンデント・プロデューサー、ポートフォリオ・ワーカーなどのいくつかの新しいステージだ。こうした新ステージを加えた「マルチステージの人生を生きるためには、これまで若者の特徴とされていた性質を生涯通して保ち続けなくてはならない。その要素とは、若さと柔軟性、遊びと即興、未知の活動に前向きな姿勢である」と本書は強調する。



(1)エクスプローラー(探検者):一カ所に腰を落ち着けるのではなく、身軽に、そして敏捷に動き続ける。このステージは発見の日々だ。旅をすることにより世界について新しい発見をし、あわせて自分についても新しい発見をする。多くの人にとって、このステージを生きるのにとりわけ適した時期が三つある。それは18〜30歳ぐらいの時期、40代半ばの時期、そして70〜80歳ぐらいの時期である。これらの時期は人生の転機になりやすく、エクスプローラーの日々は、見違えるほどの若さを取り戻せる機会になりうる。



(2)インディペンデント・プロデューサー(独立生産者):インディペンデント・プロデューサーは基本的に、永続的な企業をつくろうと思っていない。事業を成長させて売却することを目的にしていないのだ。このステージを生きる人たちは、成功することよりも、ビジネスの活動自体を目的にしている。こうした生き方をしたい人たちにとっては、企業体を築き、金銭的資産を蓄えることより、組織に雇われずに独立した立場で生産的な活動に携わるためにまとまった時間を費やすことが大きな意味をもつ。組織に属さずに主体的に働くことは、ライフスタイルを維持し、同時に生産性資産と活力資産を支えるための有効な方法だ。彼らは都市の集積地(クラスター)に集まって生活し、独特のライフスタイルを形づくって生活と仕事をブレンドさせている。年長世代の起業家たちは油断なく知的財産を守ろうとしてきたが、新しい世代のインディペンデント・プロデューサーたちは知的財産を公開し、ほかの人たちとシェア(共有)することを重んじる。



(3)ポートフォリオ・ワーカー:ポートフォリオ・ワーカーへの移行に成功する人は、早い段階で準備に取りかかり、フルタイムの職に就いているうちに、小規模なプロジェクトを通じて実験を始める。自分がなりたいポートフォリオ・ワーカーのロールモデルを見つけ、社内中心の人的ネットワークを社外の多様なネットワークに変えていく。



 本書は終章で、「変化の担い手になるのは、企業でもなければ政府でもない。・・・その担い手は私たちだ」と述べている。「長寿化の試練とチャンスを前にして、個人や夫婦、家族、友人グループが実験し、既存のやり方を壊し、それを再構築し、意見を交わし、議論を戦わせ、苛立ちを覚える必要がある」「多くの人が行動を起こし、議論することによって生まれるのは、生産的な人生を送るための新しい模範的なモデルではない。柔軟性と個人の自由を求める思いが人々に共有されるようになるのだ」「企業と政府が標準化されたシンプルなモデルを好むのに対し、個人は柔軟性と選択肢を拡大させようとする」。



 日本における超高齢社会の議論は、政府や企業に対応を求めるものばかりだ。これに対し、本書は、「担い手は私たちだ」と宣言する。そして、リスクは抱えながらもチャレンジする個人のみが、長寿化の恩恵に浴することができるのだ。









































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リンダ・グラットン著『ワーク・シフト』(プレジデント社)

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 リンダ・グラットン著『ワーク・シフト』(プレジデント社、2012年8月5日発行)は、ダニエル・ピンク著『フリーエージェント社会の到来』と並ぶ、働き方の未来(本書では2025〜2050年くらいを想定)を指し示してくれる良書だ。

 著者は「産業革命の前と後で世界は大きく様変わりしたが、私たちの息子たちの世代が経験する変化もそれに匹敵するくらい劇的なものになる」と言う。そして、「産業革命の原動力が石炭と蒸気機関という新しいエネルギーだったのに対し、これから起きようとしている変化を突き動かすのは、五つの要因の複雑な相乗効果だ」として、①テクノロジーの進化②グローバル化の進展③人口構成の変化と長寿化④社会の変化⑤エネルギー・環境問題の深刻化ーーを挙げる。

 もちろん、変化の要因を挙げるだけでは未来を語ることはできない。著者は「五つの要因の悲観的な側面をことさらに強調したシナリオを描くこともできる。それは、人々が孤独にさいなまれ、慌ただしく仕事に追われ、疎外感を味わい、自己中心主義に毒される未来だ。私たちの行動が後手に回り、五つの要因の負の力が猛威を振るう場合に実現するシナリオである」とし、このような未来を「漫然と迎える未来」と呼ぶ。

 「対照的に、五つの要因の好ましい側面を味方につけて、主体的に未来を切り開くこともできる。このような未来では、コラボレーションが重要な役割を担い、人々は知恵を働かせて未来を選択し、バランスの取れた働き方を実践する」として著者が提案するのが、「主体的に築く未来」だ。

 著者は言う。「まず必要なのは、あなたの頭の中にある固定観念を問い直すことだ。私たちは誰でも、未来についてなんらかのイメージをいだいている。そのイメージに従って、さまざまな決断をくだし、選択をおこなってきたはずだ。しかし、そのイメージが間違っているおそれはないのか。あなたは誤った未来イメージに引きずられて、誤った道を歩んでいないか」。

 「未来に押しつぶされない職業生活を築くために、どのような固定観念を問い直すべきなのか。私たちは三つの面で従来の常識を<シフト>させなくてはならない」として、著者は「第一に、ゼネラリスト的な技能を尊ぶ常識を問い直すべきだ」「第二に、職業生活とキャリアを成功させる土台が個人主義と競争原理であるという常識を問い直すべきだ」「第三に、どういう職業人生が幸せかという常識を問い直すべきだ」と語る。

 以上の流れで本書はまとめられている。

 さらに詳しく見てみよう。まずは五つの要因について。

 ①テクノロジーの進化:テクノロジーの進化は、いつも時間に追われて孤独を味わう「漫然と迎える未来」の暗い側面を生み出す要因である半面、コ・クリエーション(協創)と「ソーシャルな」参加が拡大する「主体的に築く未来」を招き寄せる要因にもなりうる。

 ②グローバル化の進展:優秀な人材が世界を舞台に活躍できるようになるという好ましい影響が生まれる半面、競争が激化し、人々がますます慌ただしく時間に追われるようになるという負の影響も生まれる。

 ③人口構成の変化と長寿化:この要因は、ある面では明るい材料をもたらす。人々が健康で長生きするようになり、80歳代になっても生産的な活動に携わり続ける人が増える。協力関係を重んじる環境で育ったY世代(=1980〜95年頃の生まれ)の影響力が強まれば、仕事の世界でコラボレーションが活発になる。移住が盛んになれば、特定の地域に有能な人材が続々と結集し、イノベーションが加速される。しかし、暗い側面もある。90歳代や100歳代まで生きるのが当たり前になれば、老後の蓄えが十分でなく、生活の糧を得るために働き口を探さなくてはならない人が増える。移住が盛んになれば、家族やコミュニティが引き裂かれて孤独にさいなまれる人が多くなる。

 ④社会の変化:具体的に例示されているのは次の七つ。①家族のあり方が変わる②自分を見つめ直す人が増える③女性の力が強くなる④バランス重視の生き方を選ぶ男性が増える⑤大企業や政府に対する不信感が強まる⑥幸福感が弱まる⑦余暇時間が増えるーー社会の変化の要因は、五つの要因のなかで好ましい結果をもたらす可能性が最も高い。一人ひとりの行動と選択で結果が変わる余地が最も大きいからだ。

 ⑤エネルギー・環境問題の深刻化:「持続性を重んじる文化が形成されはじめる」という側面は、私たちの働き方に大きな影響を及ぼすだろう。つまり「エネルギー効率の高いライフスタイルが広まって、贅沢な消費に歯止めがかかる」といった変化が予想される。

  三つのシフトについては詳細な記載があるが、ポイントをまとめると以下のようになる。

 第一のシフト〜ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ:ゼネラリストと会社の間には、社員がその会社でしか通用しない技能や知識に磨きをかけるのと引き換えに、会社が終身雇用を保障するという「契約」があった。・・・問題は、そうした旧来の終身雇用の「契約」が崩れはじめたことだ。ゼネラリストがキャリアの途中で労働市場に放り出されるケースが増えている。そうなると、一社限定の知識や人脈と広く浅い技能をもっていても、大した役に立たない。

 第一のシフトに関しては次の二つの資質が重要と著者は語る。(1)専門技能の連続的習得ーー未来の世界でニーズが高まりそうなジャンルと職種を選び、浅い知識や技能ではなく、高度な専門知識と技能を身につける。その後も必要に応じて、ほかの分野の専門知識と技能の習得を続ける。(2)セルフマーケティングーー自分の能力を取引相手に納得させる材料を確立する。グローバルな人材市場の一員となり、そこから脱落しないために、そういう努力が欠かせない。

 第二のシフト〜孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」:関心テーマごとに、世界規模のコミュニティが形成される。そうした巨大なオンラインコミュニティは、未来の世界で重要性を増す「ビッグアイデア・クラウド(大きなアイデアの源となる群衆)」の土台になる。ビッグアイデア・クラウドは、自分の人的ネットワークの外縁部にいる人たちで構成されなくてはならない。友達の友達がそれに該当する場合が多い。しかし、ビッグアイデア・クラウドだけでは不十分だ。・・・アドバイスと支援を与えてくれる比較的少人数のブレーン集団が不可欠だ。それが・・・「ボッセ(同じ志をもつ仲間)」である。ボッセは・・・声をかければすぐに力になってくれる面々の集まりでなくてはならない。また、メンバーの専門性や知識がある程度重なり合っている必要がある。専門分野が近ければ、お互いの能力を十分に評価できるし、仲間の能力を生かしやすい。ボッセのメンバーは以前一緒に活動したことがあり、あなたのことを信頼している人たちでなくてはならない。

 第三のシフト〜大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ:<第三のシフト>を実践すれば、仕事が大量消費のための金を稼ぐ手段ではなく、充実した経験をする機会に変容するのである。・・・古い仕事観のもとでは、仕事とは単にお金を稼ぐことを意味していたが、未来の世界では次第に、自分のニーズと願望に沿った複雑な経験をすることを意味するようになるのかもしれない。・・・<シフト>を行うことは、覚悟を決めて選択することだ。たとえば、ボランティア活動やリフレッシュをする際に長期休暇を取るのと引き換えに、高給を諦めるという選択をしたり、さまざまなリスクを承知の上でミニ起業家への道を選択したり、家族や友人と過ごす時間を確保するために柔軟な勤務形態やジョブシェアリング(一人分の仕事を複数の人間で分担する勤務形態)を選択したりする。

 自ら動かなければ、思うような未来は築けない。仕事の未来は、自ら作っていくという、強いメッセージを感じる本だった。

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ダニエル・ピンク著『フリーエージェント社会の到来』(新装版、ダイヤモンド社)

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フリーエージェント社会の到来

 ダニエル・ピンク著『フリーエージェント社会の到来』(新装版、ダイヤモンド社、2014年8月28日第一刷発行)は、私にとって、定年を前に、これからのライフキャリアを考える際のバイブル的存在になっている。
 昨年はブログは開店休業状態だったが、今年は、これからの人生設計に役立つ本をブログで紹介していこうと思う。すでに読み終わった本を取り上げることが多くなりそうだが、ブログをまとめるにあたって、再読することが、自分にとっても血となり肉となる気がする。
 「フリーエージェント」(free agent, FA)といえば、まず、思い浮かぶのは、プロ野球のFAだろう。ウィキペディアによるとーー。
 いずれの球団とも選手契約を締結できる権利をもつ選手のこと。フリーエージェントとなることができる権利を「フリーエージェント(FA)権」、選手がFA権を行使することを「FA宣言」という。
 FA宣言をして、大リーグで活躍する選手を見ているためか、この言葉には夢を感じる。そして、この本を読むと、特に、定年退職した人の理想の生き方として、フリーエージェントが浮かび上がってくる。
 感動を持って、読み終えたこの本の内容をまとめようと思い、読み返すと、玄田有史氏(東京大学社会科学研究所教授)の序文が、的確にポイントとなる部分を解説してくれているので、この序文をもとに、まず、この本の中身を紹介し、その後で、ぐっと来たフレーズを本文から引用することにしよう。
 ⑴序文より
 「そろそろ、私たちは、組織か、個人か、という不毛な二分法から抜け出さなければならない。大事なのは、組織も、個人も、である」「そんな二者択一を軽々と飛び越えてしまう存在。組織をうまく活用しつつ、同時に個人としての自由や成功を謳歌する。それが本書で示されるフリーエージェントの姿だ」。
 「フリーエージェントとは『インターネットを使って、自宅でひとりで働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた』人々のことである」「フリーエージェントに共通するのは、インターネットや地域コミュニティーを活用した、ヨコのネットワークの存在である。ヨコのつながりの存在こそ、フリーエージェントがプロジェクトを成し遂げるための根幹であり、セーフティーネットである」。
 「フリーエージェントの世界では、遊びと仕事の境界がいい意味で曖昧である。むしろその渾然とした状態こそが『クール・フュージョン(かっこいい融合)』という考え方が、フリーエージェントには根を下ろしている」。
 「インターネットが普及し、組織の外部とも格段につながりやすくなり、同時にグローバル化が競争のスピードを加速させるようになると、仕事の前提は『組織』から『プロジェクト(事業)』へ移っていく。仕事はまず組織ありでなく、顧客や取引先から『プロジェクト』がダイレクトに舞い降りてくる。もしくは経営からトップダウンで、リーダーに対し『プロジェクト』のミッションが伝えられ、一定期間内での遂行が求められる」「組織のタテ社会の人間関係に縛られているならば、プロジェクトの期限内での実現は到底不可能である。必要なのは、組織のしがらみにとらわれることなく、適材適所で縦横無尽に活躍できるフリーエージェントの存在だ。重要なプロジェクトの多くは、既存組織のメンバーだけから構成されるのではなく、組織を超えて集まったフリーエージェントたちの手を借りることによってのみ、成し遂げられるのだ」。
 「何から始めればよいのか。まずは、自分はフリーエージェントになると『フリーエージェント(FA)宣言』することだろう。自分のホームページをつくり、そこでFAとなることを宣言する。その上でフリーエージェントとして自分がやりたいこと、やれることの発信をとにかく始めるのだ」「情報であれ、環境であれ、医療・福祉であれ、コミュニティー・ビジネスであれ、今後成長が期待される分野に共通する法則がある。それは『与えられた者こそが与えられる』という法則だ。インターネット上では、情報を発信する人ほど、貴重な情報が集まる」「その上で、日頃思っていたり感じていることについて率直に話し合える仲間を、働いている会社や通っている学校などの外に、せっせとつくることである。それは、SNS、コネクション、同窓会、保護者会、自治会、NPO活動、地域活動など、なんでもかまわない。大事なのは、心をむなしくし、そこで交わされる他人の話や、自分の知らない世界に耳を澄まし、深くうなずき、ときに感動することだ」。
 「フリーエージェントは、けっして夢物語ではない。会社で働いている人なら、オーガニゼーション・マン(組織人)の世界にだけとどまることなく、フリーエージェントとしてもうひとつの別の場所と時間を、今日からつくるはじめるべきだ。大事なのは夢見ることではない。行動することである」。
 1冊を読み終わってしまったような気分になる素晴らしい序文だが(笑)、本文を読み進めていくと、さらにフリーエージェントとして生き、様々なコラボレーションによって、プロジェクトを進めていくことがいかに楽しいか、が分かってくる。
 ⑵本文より
 「大勢のアメリカ人がーーそして次第にほかの国の人々もーー産業革命の最も大きな遺産のひとつである『雇用』という労働形態を捨て、新しい働き方を生み出しはじめている。自宅を拠点に小さなビジネスを立ち上げたり、臨時社員やフリーランスとして働く人が増えているのだ」
 「政治や主流派メディアのレーダーに映らない場所で、数千万人ものアメリカ人がフリーエージェントとして働いている。嫌な上司や非効率な職場、期待はずれの給料に嫌気が差して会社を辞めた人もいる。あるいは、レイオフや企業の合併、勤め先の倒産により、会社を離れざるを得なくなった人もいる。いずれにせよ、彼らの行き着いた場所は同じだった。そして、さらに大勢の人たちがその後に続こうとしている」。
 「いま、力の所在は、組織から個人に移りはじめている。組織ではなく個人が経済の基本単位になった。ひと言で言えば、社会は『ハリウッドの世界』に変わりはじめたのだ」「いまの映画産業は、かつてとはまるで違う仕組みで動いている。特定のプロジェクトごとに、俳優や監督、脚本家、アニメーター、大道具係などの人材や小さな会社が集まる。プロジェクトが完了すると、チームは解散する。その都度、メンバーは新しい技能を身につけ、新しいコネを手に入れ、既存の人脈を強化し、業界での自らの評価を高め、履歴書に書き込む項目をひとつ増やすのだ」。
 「大半のフリーエージェントにとって、必ずしも『大きいことはいいこと』ではない。自分にとっていいことこそ、いいことなのだ。出世や金など『共通サイズの服』の基準で成功を目指す時代はもう終わった。自由、自分らしさ、名誉、やり甲斐など、『自分サイズの服』の基準で成功を目指す時代になったのだ」。
 「資産運用の世界と同じように、仕事の世界でも『分散投資』が生き残りの条件になりつつあるのだ」。
 「弱い絆で結ばれている知り合いは、いつも親しくしている相手ではないからこそ、自分とは縁遠い考え方や情報、チャンスに触れる機会を与えてくれるのだ」。
 「多くの場合、仕事と家庭のバランスを取るという『ゼロ・サム』の世界より、ブレンドするという『ポジティブ・サム』の世界のほうが幸せなのだ。
 「かつて当たり前だった『引退』という制度は、やがて歴史上の一時的な特異な現象として記憶されるようになるのかもしれない」「知識経済の時代には、年輪の刻まれた脳ミソは大きな財産なのだ」。
 「フリーエージェント経済の時代には、人々が生涯を通じて学べるようにするシステムが不可欠だ」。
 「フリーエージェントたちは、職場のコミュニティーを失った代わりに、新しいグループや人的ネットワークを自分たちで築いていく可能性が強い」。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 私自身も近い将来、フリーエージェントとなり、魅力的なプロジェクトをコラボレーションで進めていきたいと思っている。「君ならコラボしてもいいよ」と言ってもらえるように、フリーエージェントとしての力をいかに蓄えていくか、が当面の課題だ。

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