アキバサイネージを見学

 秋葉原で行われているデジタルサイネージを使った献血キャンペーンを見てきた。

 まず、デジタルサイネージとは何か。
 デジタルサイネージコンソーシアムによると―。
 デジタルサイネージとは、屋外や店頭、交通機関など、一般家庭以外の場所においてディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信するものです。
 「時間と場所を特定できる唯一のメディア」として新たな活用が始まっています。
 とのことだ。
 マスメディア、ネットメディアに加え、こうした家の外のメディアが今後広がっていくという。

 デジタルサイネージコンソーシアムは、東京都赤十字血液センターなどとともに、初音ミクのフィギュア展示で話題の献血ルーム「akiba:F」(今年10月オープン)や「アキバ献血ルーム」へのデジタルサイネージによる誘導効果検証実験を行った(17日から19日まで)。
 初音ミク?
 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、初音ミク(はつね みく、HATSUNE MIKU)は2007年8月31日にクリプトン・フューチャー・メディアから発売された音声合成・デスクトップミュージック (DTM) ソフトウェアの製品名、およびキャラクターとしての名称である。
 発売直後より初音ミクで作成された楽曲やキャラクターイメージを用いた動画がニコニコ動画をはじめとする動画投稿サイトに次々と投稿されたことで人気に火がつき、DTMソフトウェアとしては異例のヒット商品となった。初音ミクを用いて数多くの作品が発表されており、その一部は音楽CD等の形で販売されている。キャラクターとしての人気も高く、フィギュアをはじめとするキャラクター商品が多数発売されている。
 秋葉原を訪れるアニメファンらに人気のあるキャラクターのようだ。このキャラクターを使った献血キャンペーンをさまざまなスクリーンを使って展開するということらしい。

 JR秋葉原駅構内。あった、あった。デジタルサイネージ機器が並んでいる。
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 初音ミク。セーラームーンみたいな髪の長いキャラクターだった。
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 これはなかなか効果がありそう。常設にすればいいと思う。
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 カメラに映った人物画像に、初音ミクの髪型等をディスプレイ上で自動合成するAR(Augmented
Reality=拡張現実)と呼ばれる手法も披露された。バーチャルコスプレ。
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 可笑しい。
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 UDXビルのオフィス入り口のスクリーンでも献血をPR。
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 同ビル5階にもサイネージ機器を置いて献血をPRしていた。
 この二つは駅構内ほど効果があるとは思えなかったが、いろいろな場所で多面的にキャンペーンを行うことに意義があるのだろう。

 ゲームセンターなどの「Touch!vision」でもPRを流していた。
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 平日の昼間だったので、さすがに人はあまりいなかった。

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 気づかなかったが、秋葉原はすでにサイネージがあちこちに設置され、多数のアニメキャラクターのPRが流されている。初音ミクが目立たない。
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 一番強く訴えかけてくるのは、やはり人。電子機器プラス人、というのが大事なのではないか。

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WSJ日本版の有料会員に

 CNET Japanの今日の記事「WSJ日本版が正式にオープン--有料課金モデルで日本のメディアを刺激」を読み、ウォール・ストリート・ジャーナル・ジャパン(WSJJ)が昨日、“電子新聞”の「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」(WSJ日本版)を発刊したことを知った。 記事によると、WSJ日本版は、「The Wall Street Journal」(WSJ)に毎日掲載される200本ほどの記事の中から30本程度を翻訳して掲載するという。WSJ日本版の記事の購読は無料と有料があり、有料の記事にはタイトルに鍵マークが付いている。料金は1カ月で1980円、6カ月で9960円、1年で1万6560円となっている。
 さっそく有料会員に登録した。
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 “電子新聞”なので検索やコミュニティーなどいろいろな機能があるのかと思ったが、シンプルな作りだった(記事へのコメント投稿 、その日の最新ニュースをまとめたニュースレター=平日、朝と夕方の2回=は現在準備中で、2010年1月頃にサービス開始予定とのこと)。昨日創刊なので、昨日の記事も読みたいと思った。有料会員は「過去の記事の閲覧」ができるというが、「アーカイブコーナー」のようなものはなかった。数日掲載される特集記事も多いようで、今日更新された記事がどれで、アーカイブの記事がどれなのかが、すぐにはわからなかった(記事本文には小さく掲載日時が書いてあるが、トップ画面では新旧記事が混在している)。
 ブログやツイッターとの連動性は良い。記事の上のアイコンをクリックするだけで、簡単にツイッターや、はてなブックマークに記事のURLが載せられる。
 Twitterならば、アイコンをクリックするだけで、投稿ボックスに
今、これを読んでいます。http://jp.wsj.com/index.php/Opinions/Opinion/node_9679
 までが入力される。
 はてなブックマークには、アイコンをクリックするだけでURLが表示され、「このエントリーをブックマークに追加」すると、
【オピニオン】新技術はジャーナリズムの脅威ではない=マードック氏 / オピニオン / オピニオン / ホーム - The Wall Street Journal, Japan Online Edition - WSJ.com
 と表示される。簡単にブックマークができ、便利だ。
 そんなに簡単にURLを表に出したら、誰にでも有料の記事が読まれてしまうではないかと思ったが、さすがに対応はしていた。WSJ日本版に登録していない人がURLをクリックするとWSJ日本版へのログイン画面が出て、記事は読めない。登録すると読める。TwitterなどでのWSJ日本版の引用が増えると、WSJ日本版の加入も増えるかもしれない。
 もう一つ、役に立つのが原文(英語)のアイコン。これを押せば、原文で読める。英語の勉強もOK。

 「オピニオン」は読みごたえがある。
 グーグルの最高経営責任者(CEO)、エリック・シュミット氏の寄稿「グーグルはいかにして新聞に貢献できるか」は、「デジタル世代にジャーナリズムの任務を果たすために、メディアは力を合わせていかなければならない」などと新聞業界に協調しようと呼びかける内容でいまひとつだったが、「【日本版特別寄稿】鳩山政権、防衛政策の誤算」(キャロリン・レディ氏=元米国家安全保障会議不拡散戦略部長)は米国側のいらだちの理由がよく分かる論文だった。
 気になるオピニオンは今後このブログでもフォローしたい。
 「【オピニオン】新技術はジャーナリズムの脅威ではない=マードック氏」は正論だった。別項で取り上げたい。

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津田大介著『Twitter社会論~新たなリアルタイム・ウェブの潮流』(洋泉社)

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Twitter社会論~新たなリアルタイム・ウェブの潮流

 Twitter(ツイッター)というものがあることは知っていたが、このツールが何の役に立つのか全く分からなかった。しかし、津田大介著『Twitter社会論~新たなリアルタイム・ウェブの潮流』(洋泉社)を読み、実際にツイッターに登録してつぶやいたりしてみて、徐々にこのツールの性格が分かってきた(そのパワーはまだ実感していないが)。

 ツイッターを体験してみようかなと最初に思ったのは8月5日付日経朝刊の記事。「『ミニブログ』米ツイッター 来月にもサービス開始 携帯用サイト 利用登録手軽に」という見出しの記事だった。
 今、改めてこの記事を読むと、「米ツイッター(サンフランシスコ)はデジタルガレージと組み、9月にも日本の携帯電話に対応した専用サイトを立ち上げる」という内容なのだが、そのときは、ツイッターそのものが日本に上陸する、という記事と勘違いしていた。『Twitter社会論』によると、08年4月から日本語版のサービスが始まっていた。1年半、ノーマークだったわけだ(^_^;)

 そんな中、11月に慶應大学であったシンポジウムでツイッターによるシンポジウムの実況中継(と言っても文字でだが)が行われ、シンポジウムへの感想も同時に書き込めるということを知った。後でGoogleに「#gie2009」というハッシュタグを入れて検索すると、なるほど、実況や意見の投稿が一覧できる。なかなか便利だな、と思ったのが最初のツイッター体験だった。
 もともと、SNS(Social Networking Service)はあまり好きではない。mixi、GREEとも会員だが、結局仲良しの集まりとなってしまい、刺激のあるやり取りは望めないと思っているからだ。ツイッターはミニブログというよりミニSNSだろうと思っていた(他人とのコミュニケーションを求める度合いが強いので)。何で知らない人(というか世界中)につぶやきを発信しなければならないのか。フォローしたりされたりするらしいが、怪しい人にフォローされたら怖いではないか。女性がツイッターを始めたらストーカーのような人にフォローされてしまう恐れもある。相当暇な人だけが参加できる、ちょっと危ないサービスだと思っていた。

 『Twitter社会論』(第1章)を読んでも、米調査会社の調査結果を引用、「ツイッターでは『今サンドイッチを食べてる』のような『意味のないつぶやき』が投稿の40.55%を占めるという」と、意味のないつぶやきが多いことを認めている。
 やはり、どうでもいいツールのようだ。そう思いながら読み進めていると、津田氏は「とにかくユーザーのアイデア次第でツイッターはどんな目的でも使うことができる。単なる日常生活の報告ツールという枠組みで捉えていると、ツイッターの本質は見えてこない」という。
 では、どんなふうに使うと「ツイッターはすごい!」ということになるのか?

 第2章「筆者のツイッター活用術」でだんだんツイッターの本質が見えてきた。
 当初は使い方に悩んでいた津田氏は「多彩なつぶやきの中、特に筆者の興味を引いたのが、何かの現象や出来事、ニュースを前にしたときに、そこから派生して感じたことや普段から考えていることをメモ的につぶやくというものだった」「自分でもツイッターに日々の生活の中で思いついた提案や教訓、仕事をしていて知ったちょっとした豆知識などを積極的につぶやくようになった。するとツイッターの使用感がガラッと変わったのだ」。
 こうしたつぶやきを津田氏が始めてから、フォロワーが増えていったという。
 津田氏は「おわりに」で、「ツイッターの独自性が理解できるのは、知り合い以外も含めて100人以上フォローするあたりからだ」という。「そして、タイムライン(自分自身とフォローしている人のつぶやきが表示される)の景色が変わるのが、フォロー数300~500を超えるあたりだ」とする。

 津田氏のツイッターの使い方として最も有名なのがツイッター中継。ツイッター中継することが「tsudaる」と呼ばれるまでに有名になった。
 ツイッターの情報発信のパワーはどんどん強まっており、海外では08年5月に中国・四川省で起きた大地震、08年11月のムンバイ同時多発テロ、日本では08年6月の秋葉原連続殺傷事件などがツイッターが大手メディアに先駆けて速報したという。
 津田氏は投稿された不確かな1次情報を0.5次情報と呼び、これを確かな1次情報にするのがマスメディアの一つの役割という。同じハッシュタグを使ってジャーナリストたちが協調して事件を報道する事例も出てくるなど、ツイッターは新しいジャーナリズムも生んでいるという。

 本書はさらに政治、ビジネスなどのジャンルでもツイッターが社会的に大きな広がりを見せていることを紹介する。

 ツイッターは使いこなすのに時間がかかる。いまだによく分からない機能があるが、リアルタイム検索で一定のキーワードに引っかかったつぶやきを読み、面白いつぶやきをしている人をフォローするところから始めることにした。そうすれば、そのうちにツイッターの独自性が理解できるのかもしれない。
 ツイッターは、2ちゃんねるやブログ、SNSが実現したくてできなかった、リアルな人々の脚色のない生の声を集める機能に優れているようだ。ツイッターを通じて社会の動きを見ていくというのは確かに面白いかもしれない。

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ひろゆき(西村博之)著『僕が2ちゃんねるを捨てた理由~ネットビジネス現実論~』(扶桑社新書)

 中川淳一郎著『ウェブはバカと暇人のもの―現場からのネット敗北宣言』(光文社新書)を読んで、頭に浮かんだのは「2ちゃんねる」だった。
 玉と石の書き込みが混じり合う2ちゃんねる。トイレの落書きのような無意味なコメントや誹謗中傷も書き込まれるが、一方で、企業などが不祥事を隠蔽できなくなったのは2ちゃんねるへの内部告発があるからだったりする。「集合愚」であり、マーケティングには役に立たないのかもしれないが、ネットの存在意義をそれなりに示したのが2ちゃんねるだろう。
 その2ちゃんねるを作ったひろゆき(西村博之)が既存メディアやネットをどう見ているのか。気になって、『僕が2ちゃんねるを捨てた理由~ネットビジネス現実論~』(扶桑社新書)を読んだ。
Hiroyuki
僕が2ちゃんねるを捨てた理由

 「あとがき」を読むと分かるが、「もともとが『テレビはすでに死んでいる』(仮題)みたいな感じのテーマで進んでいた話で、既存メディアであるテレビ、雑誌、新聞、ラジオみたいなのと、新しくメディアになりはじめているネットのサイトの対比みたいな話をしていた」のがこの本の執筆のきっかけだ。

 動画コミュニティーサイト『ニコニコ動画』管理人で、元『2ちゃんねる』管理人のひろゆきは、まずネットビジネスの「大いなる勘違い」を糾弾する。
 Web2.0やクラウドコンピューティングという言葉は、「婚活」のように「命名することによってそのビジネスを生み出しているだけ」とばっさり。
 集合知についても「企業がユーザーに商品を宣伝するブログを書かせてネット上に口コミで情報を増やし、その商品の認知度を広めようというマーケティングが流行」った結果、「まっとうな情報が広告情報に紛れてしまい、探しづらくなっ」たと、悲観的だ。
 ネット広告の広告料は安い、というのが常識だが、ひろゆきは「ネットの広告単価がちょっと高いのではないか」と感じているという。仮にネット広告費が安くなってネット企業の経営が苦しくなっても「売り上げの規模が下がったときは下がったなりで経営していけばいい」とクールだ。
 ひろゆきはネットビジネスに対して何ら幻想を抱いていないようだ。

 逆に既存メディアがネットを敵視する傾向があることに対して「ネットというものは、雑誌であろうがテレビであろうが、やろうと思えば誰でも参入できる単なる手段。その手段を敵だと見ている時点で、たぶん物事の捉え方が間違っている」と批判。テレビ業界に対しては、現在の映画業界がテレビをうまく活用して共存しているのを見習い、「ネットのオイシイとこどり」をすればいいだけ」と提案する。
 具体的には、テレビも世界に目を向けよ、という。「日本人相手の商売では、売り上げ単価が下がっていくのは目に見えてい」る。「世界にモノを売る手段として便利なのが、実はネットなのです」。そして「動画業界における映画やテレビは、ネットをツールとして利用することで、お互いが共存共栄していくようになればいい」としている。

 国から電波という限られた資源を与えられ、それを受信する機械=テレビが日本中に1億台以上もあるなど、「儲けるためのお膳立てが整っている」のに、赤字を出すテレビ局は、「どう考えても経営陣が無能なだけ」と厳しい。人件費の高さや、他のチャンネルだけを意識し、「相対的な質の戦い」しかしていない制作現場などを例に挙げ、明らかにテレビの経営は間違っているという。

 新聞に対しては、「組織だって取材をし、そこに一般市民が思いつかないぐらいの見解が入っていたり、一般市民が知り得ることのない情報が入っているからこそ、初めてお金を払ってもいいだけの価値のある記事になるわけ」だが、「首相が通うホテルのバーの値段がいくらだとか、どの漢字が読めないだとか、カップラーメンの値段がどうだという・・・どうでもいい情報に喜んでいる頭の悪い読者ばかりを相手にしているから、本当に情報を取捨選択できる人からは、いらない情報を流しているメディアだと思われてしまう」と反省を促す。

 雑誌に対しては期待が大きい。「短時間で中立的な情報をひと通り網羅したいと考えた場合、ネットですべての情報を網羅することは、今となっては検索結果から広告などの無駄な情報検索結果を引き算しなければならないなど、すごい労力が必要になる」から、「すべての情報が公正ではないにしろ、ある程度中立的な視点で作ろうと情報がまとめられて」いる雑誌は有用だというのだ。

 ひろゆきはインタビューがうまい。「第2日本テレビ」を立ち上げた日本テレビの土屋敏男氏との対談では、面白いコメントを引き出している。
 「テレビの存在価値が高まったのは、何も映画を放送していたからではなく、ワイドショーとか野球中継とかテレビでしかできないものを放送したからなんだよ・・・ネットってテレビにできないことをやるから存在価値があるわけで、それがおもしろいわけじゃない」
 「ネットビジネスのプロフェッショナルはものすごい人が世界中にいるし、ネットテクノロジーをやっている人もたくさんいるけれど、ネットコンテンツのプロフェッショナルという人は世界中にいないんじゃないかな」
 「999対1の999ばかりを採用してしまうと、ずっと変わらない。テレビとかいろいろなものが変わらないのは、それが理由。数字を追っていってしまうと、物事って変わらないんだよ」
 そして、「昔から、あんまりテレビを観ない」という土屋氏は「今のテレビ局が見ているネットというのは、テレビでやったもののスピンオフなり、見逃したものを視聴できるセカンドウィンドウなんですよ。でも僕がやっている『アースマラソン』なんかは、基本ネットがファーストウィンドウで、テレビがセカンドウィンドウという考え方」だという。

 読みごたえのあるメディア論だった。

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日経コミュニケーション編『NTTの深謀』(日経BP社)その2

 日経コミュニケーションはNTTに関する多くの本を出している。宗像誠之(日経コミュニケーション記者)著『NTTの自縛 知られざるNGN構想の裏側』、日経コミュニケーション編『2010年 NTT解体 知られざる通信戦争の真実』、同『風雲児たちが巻き起こす携帯電話崩壊の序曲 知られざる通信戦争の真実』、同『光回線を巡るNTT、KDDI、ソフトバンクの野望 知られざる通信戦争の真実』『知られざる通信戦争の真実 NTT、ソフトバンクの暗闘』などだ。
 これらのいくつかを読んで「知られざる通信戦争の真実」を知ったのだが、今回の『NTTの深謀 知られざる通信再編成を巡る闘い』は、どちらかというと知られざる部分をえぐったというよりも、日本経済の新しいリーダーとしての自覚を持って通信業界を引っ張っていってほしいというNTTに対する強い願いが随所ににじみでていた。
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NTTの深謀 知られざる通信再編成を巡る闘い

 民主党政権になり、総務省は「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」を発足させた。国際競争力強化の視点を取り入れながらNTTの再々編が議論されることになるのだろう。
 『NTTの深謀』はこのタイミングで読むのにぴったり本だと思った。

 「勝ちすぎてはいけない特殊な企業――。それがNTTだ。莫大な利益を上げれば、もうけすぎと批判される。圧倒的なシェアを持てば、総務省からより厳しい規制をかけられる。だから、NTTグループは、自社のマイナス面を強調する不思議な企業になった」。
 NTTグループが非常に恐れるのが「2010年問題」。NTTグループの組織問題については「2010年の時点で検討を行い、その後速やかに結論を得る」とする「通信・放送の在り方に関する政府与党合意」があり、「NTTとしてはこの2010年問題をどう乗り切るかが最大の懸案になった」のだ。

 その後、政権交代が起こり、加えて「NTTグループには追い風が吹いてる。今後の景気の行方を考えれば競合事業者が望むような『NTTの支配力を弱めよう』といった論調はトーンダウンが濃厚なのだ」。
 それにもかかわらず、相変わらずNTTグループは組織防衛に走っていると本書はいう。

 たとえばNTTグループの次世代の通信ネットワーク基盤「NGN」。規制回避やNGNサービスへの乗り換え回避など目先の都合を優先させてNGNをスモールスタートさせた」。この結果、「NGNという信頼性の高いインフラの上で、多くの事業者が成長を見込めるプラットフォーム事業を展開できる環境を実現」できずにいる。これが「日本経済全体にとっての損失につなが」っていると指摘する。
 また、NTTの国際戦略は「日本企業向けの通信サービスを拡充する」ことにとどまっている。「海外展開は現地で大きな収益を上げるためではなく、国内市場での競争を優位に展開するための手段でしかない」。本書は黒川和美法政大学大学院教授の次のようなコメントを引用して、国際戦略の必要性を強調する。「余力があれば海外に進出するなどして、組織の規模に見合った収益力を付けてほしい。国際的な競争力を意識すれば生産性の向上にもつながります。国内だけに閉じて小さな市場でぬるい競争をしているだけでは、いつまで経っても生産性は高まらないんです。その結果ユーザーは高い料金を支払い続けなければなりません。海外進出は、日本全体にとっても利益になるのです」。

 NTTの再々編について本書は「ある業界関係者」の言葉を借りて、予想する。「同氏によると、通信サービスのレイヤー(通信レイヤー)と、コンテンツ・アプリケーションを含めたプラットフォーム以上の上位レイヤーでグループを分けるのではないかという。地域、長距離・国際、移動という現在の縦割りの構造を、通信レイヤーと上位レイヤーの横割りにするわけだ。なぜならIP化の進展で構造変化が起こっているから。電話中心の現在の分け方が時代遅れなのは明らかである」「上位レイヤー単独で切り離せている方が海外展開もしやすくなる」。
 
 本書は「今こそNTTグループは、自社の都合を優先させるために深謀をめぐらせるのではなく、自ら描く通信業界のグランドデザインを世に問うべきでないか。成長を望める上位レイヤーにどのような体制で臨むのか、NGNと代替わりする固定インフラでは今後も、加入電話時代の開放政策を甘んじて受け続けるのか。このような通信業界全体の将来を左右するテーマについて、NTTグループとして考える立ち位置を明らかにしてほしい」と結ぶ。

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日経コミュニケーション編『NTTの深謀』(日経BP社)その1

 日経コミュニケーション編『NTTの深謀』(日経BP社)を読んだ。
 この本を理解するためにはNTTの民営化や分割論に関する知識が必要だ。
 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、「中曽根内閣の民活路線のもと、1985年に3公社(日本電信電話公社、日本専売公社・・・の民営化が決定した。その一環として日本電信電話株式会社法(現在の日本電信電話株式会社等に関する法律、以下『NTT法』・・・)が施行されたことにより、旧日本電信電話公社の業務を承継し」日本電信電話株式会社(NTT)が設立された。「同法はNTTの常時発行済株式総数の3分の1を日本政府が保有しなければならないと定めている」。
 「1987年2月9日に株式公開した。・・・民営化後もその事業範囲の広大さと経済への影響力の大きさから、米国の圧力により国鉄分割(JR7社)のような地域分割論が噴出し政治問題化した。NTTは地域分割を回避すべく、ソフトウェア開発のNTTデータや移動体通信のNTTドコモなど、固定電話事業以外での子会社を設立し議論をかわしてきた。しかし、1997年に改正NTT法が国会で成立し、4社分割による再編成が決定した。1999年に固定電話事業は都道府県間電話部門として東日本電信電話(NTT東日本)、西日本電信電話(NTT西日本)に分割された。また長距離部門はNTTコミュニケーションズ(NTTコム)が設立され引き継いだ。そしてNTT自身は東西NTTとNTTコムに加え、NTTドコモとNTTデータを傘下に置く持株会社となった。NTTコムは法律上完全民営化を果たし、悲願だった国際通信に参入した」。

 さらに、「通信・放送の在り方に関する懇談会」の報告書の内容も知っておく必要がある。
 『ウィキペディア』によると、「通信・放送の在り方に関する懇談会(つうしん・ほうそうのありかたにかんするこんだんかい)は、竹中平蔵総務大臣のもと総務省に設けられた、通信と放送の融合時代における情報通信政策の在り方を幅広く討議するための懇談会。 ・・・平成18年1月より開催され、6月に最終報告書がまとめられた」。
 ウィキペディアにはこれしか内容がないので、ITproが報じた過去の記事を引用する。日経コミュニケーションの宗像誠之記者の2006年3月22日付の記事だ。

【詳報】NTTのアクセス部門分離を巡り議論紛糾,竹中懇の公開ヒアリング
 竹中平蔵総務大臣が主催する「通信・放送の在り方に関する懇談会」が3月22日,第7回会合を開催。NTTの和田紀夫社長,KDDIの小野寺正社長兼会長,ソフトバンクの孫正義社長といった大手通信事業者トップがそろい踏み,公開ヒアリングに挑んだ(写真)。会合は2時間半の予定時間を約30分もオーバーし,熱い議論が続いた。最も盛り上がったのは,NTT東西地域会社のアクセス部門の分離問題についてである。・・・NTTの和田社長が,NTTの中期経営戦略の推進について説明。懇談会から投げかけられていた,独占回帰への懸念や,アクセス部門分離の見解については,有馬彰取締役が「ブロードバンド市場では各レイヤーで競争が進展しており,中期経営戦略によりNTTの一社独占に戻ることはあり得ない」,「インフラの円滑な構築やサービスの安定供給が損なわれる恐れが大きく,構造分離に伴う多大な労力や混乱が生じるため,諸外国でもアクセス部門の分離を実施した例はない」などと回答した。

 続くKDDIの小野寺社長は,IP化時代の公正競争には,「NTT持ち株会社の廃止とグループの完全資本分離,アクセス部門の分離,当面の措置として,NTTグループ内の人,モノ,カネ,情報の共有を遮断するファイアウォールの設置が必要」と,従来の主張を改めて懇談会のメンバーに訴えた。
 最後のソフトバンクの孫社長は,「一番大切なのは,国民一人一人にとって何が有益かという視点。ブロードバンドは競争により安く,速くなったが,次はそれを国民すべてに提供すること」と切り出した。・・・孫社長は,NTTの垂直分離だけでなく,民間企業として光ファイバを引く「ユニバーサル回線会社」の設立を提言。この回線会社が引いた光ファイバ上で,NTTも含めてサービス競争を展開すべきと訴えた。孫社長は,「NTTの中期経営戦略は2010年までに光3000万回線というが,残りの3000万回線はどうなるのか,いつになったら光化されるのか」と問題提起。併せて,NTTのアクセス部門に代わるユニバーサル回線会社により,月額約690円で全国6000万回線の光化が可能という,別の懇談会で披露した孫社長の試算結果を説明した。今回は,ユニバーサル回線会社は全国で一社ではなく,電力会社のように地域ごとに分け,互いに競争させる案も新たに付け加えた。

 通信事業者3社へのヒアリングが一通り終了すると,「KDDIとソフトバンクの主張は明確で,NTTのボトルネック性とドミナンス性をどう考えるかという点に論点は絞られてきている。NTTは反論ありますか」という,懇談会座長である松原聡東洋大学教授によるNTTへの問いかけを皮切りに,NTTのアクセス部門分離の是非に焦点が当たった議論が始まった。

 NTTの和田社長は「(ボトルネックとされる)電電公社時代に敷設した設備は,民営化する際に,複数の専門家により株式に算定し国に返した(形になっている)。しかも,光ファイバは民営化後に本格的に着手したものだ」とKDDIとソフトバンクの主張に真っ向から反論。有馬取締役も「電柱を開放し光ファイバを敷設する実験も始まっている。光ファイバは,今でも引こうと思えば引けるはず」と援護射撃した。

 だが,KDDIの小野寺社長は「有馬氏は,『引こうと思えば引ける』と言ったが,それはその通り。問題視しているのは今の手続きでは時間的にNTTと比べて我々が不利だといっている。『ボトルネック』という考え方が違うのではないか」と切り返し,ソフトバンクの孫社長も「NTTは,政府保証債で引いた国民のものである電話線を光ファイバに張り替えている。光ファイバを張り替えるベースの設備が国民のものなのに,光ファイバを引く引かないをNTTの主観で決めるのはいかがなものか。690円で6000万回線を光化できる可能性があるのに」と完全にNTT対KDDI+ソフトバンクという構図で議論が続いた。

 途中,「(電話設備について)『国民のもの』という言い方はやめていただきたい。今は株主のものです」と和田社長が孫社長の主張に声を荒げて反論し,「政府保証債で引いたものを『国民のものと言うな』というような会社に,将来のインフラを任せてもいいのだろうか」と孫社長が切り返すなど,強烈な応酬が続いた。このやり取りに際し,松原座長は「株式会社といっても,NTTは政府設立の株式会社ですからね」と株主の存在を主張するNTTをやや突き放すようなコメントを放つなど,議論はKDDIとソフトバンクにNTTが押され気味となった印象を残した。

 さらに懇談会の最終報告書に関する宗像記者の2006年6月19日付の記事を引用する。
どうなるNTT?,混沌とする“2010年問題”の行方
 6月6日,竹中平蔵総務大臣が主催する「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会)が,6カ月間にわたる議論に終止符を打ち,最終報告書を完成させた。その中で懇談会は,政府がブロードバンド・ゼロ地域の解消を目指す2010年度と,地上波放送のデジタル化が完了する2011年を見据え,2011年を「完全デジタル元年」と命名。そのために,通信・放送改革に今すぐ着手すべきだと訴えた。

 竹中懇談会の通信分野における重要な論点となったのが,2010年に向けたNTTの在り方だった。NTTグループが今後のブロードバンドの主役であり,放送コンテンツを流す媒体にもなる光ファイバを大量に敷設する能力を持つからだ。報告書では,NTT東西地域会社のアクセス部門を,会計だけでなく人事交流なども分ける「機能分離」を短期策として実施するよう強調。さらに,「2010年には」通信関連法制を抜本的に見直すため,NTT持ち株会社の廃止などを含む検討を「速やかに」始めるべきとも提言している。

 ただし報告書は,アクセス部門の機能分離やNTT法の廃止を提言するなど,NTTに厳しい要求を迫るだけではない。東西NTTの業務規制の撤廃にも言及するなど,東西NTTの自由度を高める新たな施策を打ち出しているのだ。つまり2010年以降,現NTTグループ企業同士の再統合が可能となり,東西NTTが放送局を買収することさえ自由になる可能性がある。

 報告書の提言が実現すれば2010年には,現在とは全く異なったNTTの姿が形作られ,日本の通信・放送市場に今だかつてない競争環境が訪れる。だが,これが本当に実現するのかどうかは全く不透明な状況にある。

「2010年までに光3000万回線」を宣言したNTTの猛反発
 「“2010年問題”は一体どうなるのか」---。通信業界では最近,このような言葉がささやかれ始めた。竹中懇談会が打ち出した2010年に向けた提言に,NTTの競合事業者が期待する一方で,その実現性をいぶかる声もあるからだ。実際,2010年に向けた通信市場の競争環境の在り方について,NTTや政権与党である自由民主党(自民党)の意見は,竹中懇談会と食い違う。

 アクセス部門の機能分離やNTT法廃止については,当のNTTが猛反発している。というのもNTTグループは,2005年11月に中期経営戦略のアクションプランとして,光アクセス回線の構築計画を公開済みだからだ。具体的には,2010年までに次世代IPネットワークを構築し,光アクセス3000万回線を普及させるという計画を達成するため,現在のNTTグループの一体化を進めるというもの。NTT持ち株会社の配下にある東西NTTやNTTコミュニケーションズ,NTTドコモなどの主要通信事業会社の役割分担を明確にし,重複事業の解消を目指している。このための布陣を敷いた矢先に,持ち株会社の廃止も視野に入れる竹中懇談会の報告書が出てきたわけだ。

 NTT持ち株会社の和田紀夫社長は,竹中懇談会の報告書が出来上がる前から,懇談会の議論をけん制する発言を繰り返した。「アクセス部門の機能分離など受け入れられない。最終報告書は出ていないが,仮にNTTとして納得いかない内容なら,明確に抗議する」と発言。NTTの有馬彰取締役も,「現状のNTTの組織形態に問題があるとしても,だから機能分離をしろというのはあまりに乱暴な議論」と非難する。

 同時に有馬取締役は,「そもそも懇談会は通信と放送の融合について議論すると言っていたのに,なぜNTTの組織論に焦点が当たったのか。議論の経緯を見ながら,嫌な予感はしていたのだが」とぼやく。独自に3000万回線の光アクセスを引くことを宣言したNTTにとって,竹中懇談会の報告書はまさしくその方向性をひっくり返すもの。東西NTTなどの規制緩和という“アメ”が用意されているとはいえ,すんなりと受け入れられる内容ではない。

「速やかに始めるべき」か,「2010年ころに検討すべき」か

 一方,自民党はNTTと重なる部分が多い意見を明らかにしている。片山虎之助氏が委員長を務める「電気通信調査会 通信・放送産業高度化小委員会」(片山委員会)がまとめた案では,NTTの組織問題について「拙速に結論を出すべきでない」と提言。「2010年ころに」NTT法などの関連法令の改正を検討するべきだ,としている。

 片山委員会は竹中懇談会とほぼ同時期に始まり,竹中懇談会と同様に放送と通信の在り方について議論を進めてきた。NTTは竹中懇談会の報告書案が見え始めたころから,片山委員長にも相談に行っていたようだ。こうした動きが奏功したかどうかは不明だが自民党案は,NTTが次世代ネットワークを完成し,3000万回線の光アクセスを引き終わるまでは様子見をする案となっている。

 NTT法廃止の議論は,竹中懇談会の提言通り「速やかに始めるべき」なのか,自民党案の「2010年ころに検討すべき」なのか---。7月初めにも政府が基本政策としてまとめる「骨太方針」への反映に向け,竹中懇談会と自民党の調整は水面下で続いている。2010年のNTT像と通信・放送市場の競争環境を左右するこの「2010年問題」の行方を,業界全体が見守っている。


 そして、2006年6月20日に、通信・放送の在り方に関する政府与党合意がまとまる。宗像記者の2006年6月22日付の記事を引用する。
【特報】「NTTの組織問題は『2010年時点』で検討」,政府与党が合意
 通信・放送分野の改革案について,政府・与党が6月20日時点で合意していたことが明らかになった。焦点となっていたNTTの組織問題は,政府・与党の合意文書に「2010年の時点で検討を行い,その後速やかに結論を得る」と明記している。

 合意文書である「通信・放送の在り方に関する政府与党合意」には,最終調整に当たった竹中平蔵総務大臣や片山虎之助自由民主党参院幹事長などが既に承認のサイン済み。22日現在,自民党や公明党,総務省など関連部署の幹部の承認を待っている状態で,これらの承認がすべて取れ次第,合意内容は来週にも正式発表される見込みだ。この政府与党合意の内容が,7月上旬にまとめられる経済財政運営の基本方針「骨太方針」に反映される。

 竹中総務大臣は,自身が主催した「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会)で,「『2010年には』通信関連法制を抜本的に見直すため,NTT持ち株会社の廃止などを含む検討を速やかに始めるべき」(『』は編集部による注記)と提言する内容の報告書を発表していた。一方,与党である自民党の片山参院幹事長が委員長を務める「電気通信調査会 通信・放送産業高度化小委員会」(片山委員会)は,NTTの組織問題について,「拙速に結論を出すべきでなく,『2010年ころ』にNTT法などの関連法令の改正を検討するべきだ」と提言していた。NTTの在り方に関しては,竹中懇談会と片山委員会の見解が一致せず,骨太方針への反映を巡り調整を続けてきた。

 今回の政府与党合意に明文化される「『2010年の時点』で検討を行い,その後速やかに結論を得る」という表現は,竹中懇談会と片山委員会の折衷案と言える。最後まで議論となったのは,「2010年の時点」という文言だった。

 片山委員会の案ではNTTの組織見直しを「2010年ころに」としていたが,この文言であれば,検討開始は2010年に限定されず,2012年や2013年に検討するという解釈も可能。だが,「2010年の時点」と明記することで,4年後の検討開始が約束される。合意文書の表現は一見すると,「2010年までに」と主張してきた竹中懇談会が大幅に譲歩したように見えるが,もともとの片山委員会の案からも時期が前倒しとなる格好。「2010年の時点」という明確な表現は,2010年までの検討開始を求めた竹中懇談会と,2010年以降の検討開始を提言した片山委員会の,最終調整における落としどころとなった。

 NTTの組織問題について「2010年の時点で検討」と,議論の時期を明確化することには,NTTからの猛反発があったとされている。竹中懇談会と片山委員会の意見のすり合わせに時間がかかった背景には,当事者であるNTTとの調整にも時間を費やした事情も絡んでいるようだ。


 これでようやく『NTTの深謀』が理解できると思う。(^^ゞ

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中川淳一郎著『ウェブはバカと暇人のもの―現場からのネット敗北宣言』(光文社新書)

 梅田 望夫『ウェブ進化論』(ちくま新書、2006年2月刊)はロングテール、Web2.0といった言葉を世に広め、企業関係者らにもインターネットに対する期待を抱かせたが、最近、「そんな言葉に踊らされてはダメ」という本が増えてきた。
 山本 一郎著『ネットビジネスの終焉』(PHP研究所、2009年11月刊)は、「ネット発のキーワード、とりわけ『Web2.0』と関連づけられた概念は、ことごとく・・・『実際のビジネスで考えると想像以上にコストがかかる』ものばかりである」と批判。
 夏野 剛著『グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業』(幻冬舎新書、2009年7月刊)は「ウェブ2.0がバブルのようにもてはやされていた頃は、その言葉に踊らされて、これまでインターネットを使ったサービスにまるで見向きもしなかった企業さえも、ウェブ事業に乗り出した。『何かやらなければいけない』と気ばかりが焦ってしまい、結局、業種や商品、サービス形態など、自分たちの強みをまるで考えることなしに、『皆がやっているから』という理由だけで始めた事業は大体失敗している」「実は、ウェブやITというのは、単なるツールにすぎない。つまり、自分が手がけている商売の本質は、ウェブになっても何ら変わらないのだ。なのに、世の中はインターネットが一般的になったから何かやろうという安易な発想でウェブビジネスを始める企業が多すぎる。まるで、ウェブを使えば悪い点を覆い隠し、何もかもが成功に導かれると思っているかのように」と“バカ企業”が多いことを嘆きながら、正しいネットビジネスを伝授する。
 中川淳一郎著『ウェブはバカと暇人のもの―現場からのネット敗北宣言』(光文社新書、2009年4月刊)も気になっていたが、あまりにストレートなタイトル(笑)で新しさを感じず、読んでいなかった。しかし、最近、Twitter(ツイッター、フリー百科事典『Wikipedia』によると、個々のユーザーが「つぶやき(ツイート)」を投稿することで、ゆるいつながりが発生するコミュニケーション・サービス)がはやるなど、「暇人のもの、というのはもしかしたら、当たっているかもしれない」と思い、読んでみた。
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ウェブはバカと暇人のもの―現場からのネット敗北宣言

 ブログでちょっとした失言をすると正義感を振りかざしたネットユーザーの批判のコメントが殺到し、ブログは炎上する。著者は「『失言増幅装置』であるインターネットのユーザーが増えたことにより、世の中のコンテンツがより無難に、つまらなくなっていく流れは、たぶんこれからも進んでいくだろう」と危惧する。
 それにしても何で「関係のない人」がそんなに怒るのだろう。余計なお世話ではないか。著者が思い悩んだ末の結論が「どう考えても彼らは暇人である」だ。

 著者は「ネットで流行るのは結局テレビネタ」ということに気づく。ネットユーザーは地上波テレビのユーザーとかぶるのだ。「両者に共通するのは、テレビは受信料、ネットはプロバイダとの契約料さえ払えば、あとはどれだけ見ようが無料な点だ」。
 暇人かどうかは知らないが、ネットで積極的に書き込みをするようなユーザーとテレビユーザーはどうも重なっているようなのだ。テレビで視聴率の高い番組を思い浮かべれば、だいたいユーザー層はイメージできる。

 そして、著者は「ネットは暇つぶしの場であり、人々が自由に雑談する場なのである。放課後の教室や居酒屋のような場所なのである」と断言。ネットへの向き合い方を提案する。

 「居酒屋で客が『商品にやたらと詳しい中年のオッサン』よりも『商品に詳しくはないけど、ノリの良いキレイなおねえさん』を求めるのは当然だろう。ネットでも『商品に詳しくはないけど、ノリの良いキレイなおねえさん』によるプロモーションをすべきなのである」

 ネットはそういう場だから、あまり期待しすぎてはいけないと著者は言う。
 「何かプロモーションをしたい場合、これまでの既存マス4媒体と屋外広告・イベント等にネットをいかに組み合わせるか」くらいでいいのだ。

 ネットは「予約」「検索」「価格比較」「空席確認」「地図」「路線検索」「クーポン取得」「とある分野に詳しい人の発見」「通販」・・・などの分野では他の追随を許さないほど便利だが、「これはあくまでも『プロがネットを相手にした結果』である。・・・だが、一般人がネットを使うと途端に問題が各所で散見してくる」。
 「ネット上の不特定多数の人々(や企業)を、受動的なサービス享受者ではなく能動的な表現者と認めて積極的に巻き込んでいくための技術やサービス開発姿勢」というのが『ウェブ進化論』でのWeb2.0の定義だが、集合知ではなく「集合愚」が渦巻くいまのネットは、こうした理想の姿とはかけ離れているようだ。
 「ネットへの幻想を捨てよ」というのが著者の結論だ。

 ネットへの期待と幻滅が交錯して、ネット社会は正しく育っていく。夏野氏の言うように、インターネットはようやく、単なる道具になってきたのだろう。

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山本一郎著『ネットビジネスの終わり』(PHP研究所)

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ネットビジネスの終わり

 山本一郎著『ネットビジネスの終わり』(PHP研究所)を読んだ。
 帯に書かれたキャッチコピーは「人気ブロガー『切込隊長』が描く産業社会の未来」。ポータルサイトや電子商取引サイトの限界について論じた本かと思って読んだが、日本のものづくり信仰の限界や、瀕死の新聞業界、もてはやされているほど甘くないアニメ・ゲーム業界など、幅広く日本の産業界の問題を取り上げている。変わっていかなくてはならないが、変われない日本の現実を冷徹にとらえる内容だった。

 第二章「瀕死のメディア産業」では、「読者が求める専門性のある高度な情報(医療やビジネス、政治、国際情勢など)は、必ずしも・・・取材を進めている新聞記者たちが持ち合わせているとは限らない。逆に、読者の求める専門性の要らないカジュアルな情報(芸能やスポーツ、エッセイなど)は、ネットで無料で出回っているため、新聞記者を雇える価格では読者が買ってくれない」という新聞の窮状を指摘。
 一方で「新聞事業の低迷を見越して、その新聞事業で培った強みを活かして新規進出をしようとした各事業が赤字のまま浮上することができず、ただでさえ細った体力を新規事業の失敗で削ってしまうという悪循環は、経営危機に陥ったアメリカの新聞各社に共通して見られる」とアメリカの事例を挙げ、新聞業界に苦境から脱する術がほとんどないことを明らかにする。
 そして、「我が国では新聞記者を一人雇用するのに年間約1100万円の直接費用がかかり、社会保険やオフィス、交通費、取材費など必要なコストを含めると2500万円程度の費用がかかる」「一方、一般的なIT企業がウェブを維持するのに必要なランニング要員は年棒わずか450万円程度が相場」と新聞とウェブのコスト構造が違うことを説明し、「デジタル部門に進出してPV(ページビュー)を上げ、物販などで稼ぐ、というのは理想であるのは間違いないが、新聞社のコストの延長戦上でデジタル部門を振り回しても未来永劫黒字になることはない」と断言する。

 それでは新聞業界はどうすればよいのか。
 「経営の合理化はしっかり進めた上で、官公庁や政治に対して強く働きかけ、国民の知る権利と報道内容の質的向上を目的とするための新たな公的な枠組みを構築することである」。
 「あるいは野放図にウェブでの情報が展開される状況を改めさせ、何らかの規制をネットでの事業展開や表現に対して加えていく方法で競争のルールを変更させることだ」。
 
 最後の点に関しては第四章「情報革命ブームの終焉」でその論拠を詳しく説明している。
 「日本でYahoo!が最大のポータルサイトである理由は、ほぼタダ同然に近い金額で引っ張ってきた新聞記事を読者に読ませ、ニュースを読みたい大量の新聞読者に記事をばら撒くことで膨大なPVを稼ぎ、そこに広告を掲載したり収益性の高い物販サイトを併設したりして媒体力を伸ばしていったからである」。
 「新聞社や出版社のコンテンツが草刈場となって、ネット上で集客する安い餌と化したのは間違いない」。
 「情報革命を標榜する情報化社会とそれに伴ってバブルのように発生した世界的な金余り現象は表裏一体となって、情報を生み出す従来の産業を敗者とし、良質な記事を組織的に掲載するためのまともなトレーニングも受けていないようなネット媒体や、記事の正確性に疑問のあるネット記者が生み出され、社会的に価値の乏しい芸能やスポーツといった娯楽情報だけが、洪水のようにネット内を駆け巡ることとなる」。
 「黒字化の経営努力の乏しいベンチャー企業が豊富な市場からの資金調達力で既存ビジネスのダンピングを繰り返し、従来からある産業基盤を緩やかに破壊してきたにすぎない」。
 「ネットは自由に情報を閲覧する能力を人に与える。その一方で、ネットは人が見たくない情報から遠ざかる自由も与える。必要とする情報が増えれば増えるほど、際限なく延々と新しく深化された情報を個人は獲得し続ける。その蛸壷化した情報に追い立てられた個人は、周囲の状況がどうなっているのか、関心外の情報がどのような流通をしているのか、知るきっかけを与えられることはない」。

 頷く部分が多いが、その結果、新聞業界が政府にネット規制を求めるというのは自殺行為ではないだろうか。多くのユーザーが新聞が不要と思えば、それはそれで、やむを得ないと割り切るしかないような気もする。
 新聞はユーザーの支持を得る形で必ず進化できる。そんな期待を持つのは甘いのだろうか。 

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小林弘人著『新世紀メディア論――新聞・雑誌が死ぬ前に』(バジリコ)

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新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に

 『2011年新聞・テレビ消滅』 (佐々木 俊尚著、文春新書)、『新聞・TVが消える日』 (猪熊 建夫著、集英社新書)など、最近、マスメディアの苦境をテーマとする本が多い。
 本書もそうした内容かと思って読んだが、現在の新聞、雑誌の問題点を指摘する記述はそれほど多くなく、むしろこれら紙メディアの生き残り策に多くの紙数を割いている。
 「新聞的・雑誌的なものが進化したもの」としてウェブメディアをとらえ、どうすれば、進化の形(ウェブ出版)が可能かを具体的にアドバイスしている。

 「ネットで既存のメディアが出遅れている最大の原因は、技術や人的リソースなどの要因ではなく、『やる気』の問題」と指摘。こうした「その地位の上にあぐらをかいて、ぼんやりしている」企業が得意とする領域こそが、新しいウェブビジネスのターゲットになるという。

 ネットビジネスを成功させるためには、かつて雑誌の編集者が持っていた「熱さ」を注ぐことが必要とする。
 「ネット進出というテーマは、多くのマスメディアにとって、『新たにカネにもならない流通経路が増えたよ、やれやれ』ということではありません。『事業の継承および、イノベーション(革新)による価値と利益向上、もしくはコアビジネスの新たな展開』という直面すべき経営課題であり、『本質とは何か?』を問う難問なのです」。

 ネットメディアの台頭で既存メディアとの役割分担も変わってくる。
 「これからは、電子媒体だからフローが高いというわけではなく、行動属性にあわせて、メディアはその情報特性も変えていくように推移していくのではないか・・・この場合の行動属性による差別化とは、たとえば、紙の新聞は通勤に携行し、カフェでコーヒーを飲みながら読んだりするものだから、そちらを“ブラウジング”させ、字数を少なくする。そして、オフィスや自宅でPCを起動したときには、“じっくり”とウェブページそしてを読ませるという情報設計の『つくり分け』にあるでしょう」。
 「今後は行動属性別にメディア設計することで、コンテンツ・ホルダーやパブリッシャーは、ワンソース・マルチユースならぬ、ワンメディア・エニイタイム・エニイプレイスを目指すことでしょう」。

 ユーザーを主体にどんなメディアを組み合わせれば、ユーザーが満足するかを考えることが大切になる。
 「メディア企業の可能性は、『自ら編んだ情報を伝えたい』という編集者の欲求を満たすためのみに存在するのではなく、そこから先の『情報によって、つながった人たち』の欲求を満たすために、何をすべきかを考え、立体的にサービスを提供できるよう価値転換をはかるところにカギがあります」。
 「ひとつのメディアから、リアルであれ、バーチャルであれ、特性の違うメディアを繋げ、しかし、どのメディアにおいてもユーザーがロイヤリティを感じるブランデッド・メディアを築くことが、次代のメディア・クリエイティビティではないか」。
 
 「『雑誌の本質はその形に非ず』なのです。本質は『コミュニティを生み出す力』なのだと考えています」。
 「いまの紙メディアに欠けているのは、当初に備えていたであろうベンチャー精神だと思います。それが制度となり、エスタブリッシュ化されてしまうと、精神や気迫よりも、いかにそれを維持するかという手段が目的化しがちです」
 形を変えてもメディアづくりの精神さえ失わなければ、「紙の時代から綿々と続く最良のDNAを継承できるものと信じています」と著者は結んでいる。
 もっともこの本で紹介されているウェブは必ずしも勢いを感じさせるものばかりではない。本当に力のある新世紀メディアの誕生はこらからなのだろう。

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大前研一著『サラリーマン「再起動」マニュアル』(小学館)

 大前研一著『サラリーマン「再起動」マニュアル』(小学館)を読んだ。
Saikidou
サラリーマン「再起動」マニュアル

 「イントロダクション」に次のように書いている。
 「バブル経済崩壊後17~18年もぬるま湯につかっていたせいで日本は緊張感が全然なくなり、政府はもとより地方自治体も企業も個人も、たるみ切っている。だから、どの部門もトラクション(駆動力)がなくなって日本全体が“フリーズ”しているのだ。しかし、そういう現状は、志のあるサラリーマンにとっては大きなチャンスである。周囲がみんなフリーズしている時に『再起動』してグローバルに通用する人材になれば、日本企業はもちろん、世界中の企業で活躍できるからだ」。
 たるみ切っているとは思わないが、時代の大きな変化についていけず、業績の急降下にコストカットで対応するだけの覇気のない企業が多くなっているのは事実だ。何が間違っていて、どうすれば現状を打開できるのか。本書は欲求不満の高まるサラリーマンの背中を強く押してくれる。
 「2009年は・・・『AG25年』・・・『AG』とは『アフター・ゲイツ(ゲイツ後)』、すなわちゲイツ率いるマイクロソフトの『ウィンドウズ』バージョン1が誕生した1985年に幕を開けた新世紀を意味している。・・・世界はこの年を境に一変した。・・・何もかもがアナログからデジタルへ、リアルからバーチャルへ、モルタル(現実の店舗)からクリック(サイバービジネス)へと急速に移行していった。そして、それ以降の25年を細分化すると、5年ごとに大きな転換点を迎えており、現在は、旧世紀の残滓が一掃される最終段階の激変期に突入している」
 ところが、「いま日本の社会で中核的な役割を担っているはずの」「30代後半~40代のサラリーマンの大半は、このビジネス新大陸にうまく適応できていない」という。「新大陸の環境(=デジタル時代の新しい経済社会)で生き延びていくための戦闘訓練を受けていない」ためだ。
 どんなことを行えばいいのか。
 「新大陸で勝ち残る企業の多くはプロジェクト・ベースの組織が主流になると思う。なぜなら、新しいものを生み出していくためには、マンネリ化しやすいピラミッド型組織ではなく、変化に柔軟かつ素早く対応できるプロジェクト・ベースが適しているからだ」
 「プロジェクトは、立ちふさがっている問題が明確に存在し、それを解決して答えを出すためにやるもの、社内の既存組織ではなかなかできないことをやるためのものだ。その場合は従来路線から発想が飛ばなければ絶対にブレークスルーできないので、同類項や既存の人間だけを集めてもダメなのだ」
 「経営指標はたしかに重要だ。しかし、それが目的になってはいけない。現場で何が起きているのか? お客さんの財布の使い方はどう変わっているのか? 現場でじかにお客さんと接し、現場で考え、現場から発想することが大切だ」
 「会社に入って20年前後の中堅世代には事業構想が苦手な人が多い。その最大の理由は、会社の中で事業計画が“年中行事”になっているからだ。たとえば、毎年秋になると事業計画会議があって、来年度の予算は事業計画を決めろといわれる。そうすると、どうしても・・・『Do More Better』という考え方、すなわち従来と同じ方向の中でより良くしていくという考え方に陥りがちになる」
 「旧大陸系企業は、数字がコミュニケーションの基本である。・・・まず数字を示して目標を立て、その目標に到達するための行動計画を作り、それに必要なヒト、モノ、カネを手当てしていく。・・・しかし、その数字はすべてアナログの数字である。つまり旧大陸はアナログ社会なのである。だから発想が飛ばない。方向転換ができない。同じ方向でスピードと程度を変えるだけだ」

 本書は「現場力」が強い企業がエクセレントカンパニーだとして、スペイン生まれのカジュアルブランド「Zara」を例に挙げている。スペイン・ガリシア地方のアパレルメーカー、インディテックスが展開している店だ。
 「たとえば、東京・六本木ヒルズ店の店長から、うちの店ではこういうジーンズが売れていて在庫が足りなくなりそうだ、と本社に連絡が入る。すると、わずか48時間以内にその商品が届くというオンデマンド・システムを構築しているのだ。そればかりか、全く新しい商品でも2週間あれば作れるというから驚きである。これから流行しそうなパンツやドレスが競争相手から出てきたら、それに沿ったものをすぐに作って店に並べられる。要するに、アパレル版の『ジャスト・イン・タイム』方式なのだ」
 「日本の小売業の場合は、本社部門に立て籠もって販売データだけを頼りに現場感覚をおろそかにしている、といわざるを得ない。・・・日本の小売業はもっと現場を大切にして、統計よりも現場感覚に重きを置き、それに本社部門が対応していくべきではないだろうか」
 しっかりと顧客をつかんだうえで、ものづくりは世界で最も安くて最も優れたものをつくる企業に委託するというのがこれからのエクセレントカンパニーだという。その例として、パソコンメーカーのデル、世界最大のEMS(電子機器受託製造サービス)メーカーの鴻海工業(Hon Hai Precision Industry)を挙げている。
 「ところが日本の総合電機メーカーには、そのことに気づいている会社が少ない。・・・自分で設計し、自分の部品を使い、自分で組み立て、自分のブランドで売るという垂直統合モデルでやってきた彼らは、メーカーのプライドだけ高くて作る能力がない。コストは高いし、設計では意地を張るし、何でも自分でやろうとする」

 最近のリストラに対しても一刀両断。「根本的な企業体質に問題がある会社がよくやるリストラ策は、“ケチケチ運動”だ。たとえば、昼休みは電気を消す、紙は必ず裏も使う、ボールペンは使い切るまで新品を支給しない、といったみみっちい経費削減である。これはダメ会社の典型だ。その程度の節約は会社のムードが暗くなるだけで、全部足してみても0.1%の削減になることは、まずない」
 「リストラを始めた会社はやたらと仕事が忙しくなる。仕事をリストラしないでヒトをリストラするから、残った人の仕事量が倍ぐらいになってしまうのだ。しかも、それは全部、『できる人』に回ってくるので、今度は過労死の問題が出てくる。本来は不要な仕事をリストラして効率を上げるべきなのだが、そんなことをしてくれる気の利いた経営トップは見たことがない」
 「普通、会社の組織は必要な業務と不要な業務、必要な人間と不必要な人間が霜降り肉のように混ざっている。分析すると、どこの会社にも4割ぐらいの不要な業務がある。たとえば、2回で十分な事業計画を5回も開いていたり、社長がまともに読みもしない分厚い業務リポートの提出が義務づけられていたり、といった定型業務である。ダメな人間に限って定型業務が好きだから、ダメな人間が多い古い会社ほど、知らず知らずのうちに脂肪がたくさんついてくる」

 自分の会社は明らかに旧大陸企業。そう思った読者が多かったのではないだろうか。政権交代のような思い切った再起動が、成功体験もある企業などで果たしてできるのだろうか。再起動できないまま、クラッシュする未来が思い浮かぶ。

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